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わが家にあった予算・ローン[3] 教育重視! 子育て世帯にあった住宅ローンの組み方・返し方は?

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わが家にあった予算・ローン[3]教育重視! 子育て世帯にあった住宅ローンの組み方・返し方は?

子どもの教育費は住宅ローンと並ぶ、子育て世帯の大きな支出項目です。私立と公立で学費は大きく変わってきますし、塾やそのほかの習い事で多額の費用がかかることもあります。そこで教育熱心な家庭はどんな住宅ローンを利用すべきなのか、住宅ローンをどのように組むべきかについて「ホームローンドクター」の淡河範明(おごう・のりあき)先生にうかがいます。

今回のご相談者はKさん夫婦。夫のTさん、妻のAさんともに35歳の会社員です。
5歳の子どもがおり、現在は東京都文京区に家賃20万円のマンションを借りて住んでいますが、子ども部屋の必要性などを考え、同じ文京区内で新築マンションの購入を検討しています。
子どもの教育費を捻出しながら住宅ローンを返済していくには、家計も含めて、どのように設計すべきなのでしょうか?

【連載】教えて、ローンドクター! わが家にあった予算と、借り方・返し方
住宅購入に悩みはつきませんが、「予算」は最も大切なポイント。年収の何倍までとか、頭金はこれくらい必要などいろいろな情報があふれていますが、人によって、物件によって、タイミングによって変わるため、実際にはみんなに通用するセオリーはありません。いったい「わたし」「わがや」にとってはいくらの物件を買えばいいのか? ローンはどう組めばいいのか? そんな疑問に「ホームローンドクター」である淡河範明(おごう・のりあき)先生がビシッとお答えいたします。

今回の登場人物と住宅購入予定
【Kさん夫婦の場合】

(イラスト/岩間敦美)

(イラスト/岩間敦美)

7000万円のマンションを文京区に購入したい夫婦の家計を分析!

淡河範明先生(以下、先生):今日は、文京区内にマンションを購入したいというご相談ですね。7000万円のマンションを購入されるご予定だとか。

夫:はい、子どもの教育を考えると、気になる小・中学校が多くある文京区に住み続けたいと思っていまして。

妻:ゆくゆくは子どもの留学や大学院への進学、また6年制の大学の入学も視野に入れて塾や習い事に通わせています。

先生:まず現在の家計の状況を教えていただけますか?

夫:収入は2人合わせた手取りが70万円ほどです。支出は家賃が20万円で、食費、水道光熱費等の生活費が17万円、小遣いが8万円、各種の保険が5万円など。子どもの教育費は幼稚園や習い事代で毎月10万円ほど掛かっています。毎月10万円程度とボーナスを住宅購入費用などの貯蓄に回しています。

(イラスト/岩間敦美)

(イラスト/岩間敦美)

先生:現時点で教育費に毎月10万円が掛かっているんですね。仮にお子さんが小学校~大学まですべて私立に通うことになると、一般的に学費だけで2000万円ほど掛かると言われています。さらに習い事や塾、一人暮らしやホームステイ、大学院や6年制の大学に通わせるとなると別途2000万円くらいは用意しておく必要があるかもしれません。
つまり4000万円が必要と考えると、お子さんの教育費に毎月20万円は確保しておく必要があります。

夫:そうですよね……。さしあたり家を買ったら、現在、住宅購入費用として貯蓄している分を教育費に充てようと考えています。

先生:基本的には、お二人がずっと正社員として働いて現在の収入を維持できるのであれば問題はないと思います。あとは老後の備えについても考えておきたいですね。

(イラスト/岩間敦美)

(イラスト/岩間敦美)

老後への備えも大切! どれくらいあれば余裕をもって老後を過ごせる?

先生:現在、毎月10万円を住宅購入費用として貯蓄されているとのことですが、住宅購入後にそれをお子さんの教育費に充てるとしたら、その他の用途に使える分は残らなくなってしまいますね。

お二人とも現在35歳ですから65歳に定年すると考えても、まだ30年間は働けます。第2回の記事で、老後資金の貯蓄額として3つのプランを挙げたのですが、お二人の現在の生活水準を考えると、65歳の定年退職時に3000万円は貯めておきたいところです。ボーナスを老後資金に充てるという方法もありますが、ボーナスは会社の業績や景気に左右されますから臨時収入と考え、突発的な出費に備えるお金、というくらいに考えておいたほうが良いでしょう。できれば他の生活費を見直すなどして、毎月8万円程度を貯蓄できるように検討してみてください。

妻:子どもの教育と家を買うことで頭がいっぱいで、老後のことはあまり考えていませんでした……。

先生:お子さんの将来を第一に考えるのであれば、定年退職後もお子さんに経済的に頼らずに済むように計画的に貯蓄しておきましょう。

(イラスト/岩間敦美)

(イラスト/岩間敦美)

教育費を確保しながら、住宅ローンを返済していくにはどう組めばいい?

先生:では、住宅ローンの組み方や返し方について考えていきましょう。Kさん夫婦の収入であれば、7000万円のマンションを買うことは可能です。頭金のご用意や返済計画についてはどのように考えていますか?

夫:頭金は親からの援助も受けて1000万円ほど用意できます。できるだけ早めに、遅くとも定年退職時にはローンを完済していたいので、6000万円の融資を30年で返していこうと思っています。

先生:では6000万円を借り入れ、返済期間はご希望の30年で住宅ローンを組んだ場合のシミュレーションを見てみましょう。お二人とも会社員で安定収入があるためペアローンを組むこともできますが、今回は返済期間による比較がしやすいよう夫のTさんが単独で住宅ローンを組んだ場合の試算をしました。下表を見てください。

※元利均等返済。ボーナス時加算なしで試算。金利は2018年10月1日現在のもの。金利やキャンペーン内容は金融機関や時期によって異なります

※元利均等返済。ボーナス時加算なしで試算。金利は2018年10月1日現在のもの。金利やキャンペーン内容は金融機関や時期によって異なります

今回はA信託銀行の【フラット35】Sを利用した場合と、金利キャンペーンを利用した場合を比較する形で試算しています。【フラット35】には、省エネやバリアフリーなど、一定の住宅性能を満たす場合に10年間、金利の優遇を受けられる【フラット35】Sがあります。そのため、当初10年間はA信託銀行のキャンペーン金利より、金利が低く抑えられます。購入を検討しているマンションが対象になるか、確認しておくといいでしょう。

11年目以降はA信託銀行のキャンペーン金利のほうが低くなりますので、総返済額としてはA信託銀行のキャンペーンのほうが50万円強、低くなります。今回比較している金利キャンペーンのように期間限定で展開しているもののほか、各金融機関ではさまざまな商品・プランを用意しています。それぞれで総返済額がどのように変わるかを試算して、比較検討することをおすすめします。

(イラスト/岩間敦美)

(イラスト/岩間敦美)

固定金利と変動金利、どちらで融資を受けるのが良い?

先生:現在の家賃は20万円とのことですが、住宅を購入すると固定資産税や管理費・修繕積立金などが発生するので、住宅ローン返済額とは別に通常、月に3万~4万円ほどかかります。先程のプランを見ると、30年での返済だと住宅費が重くなってしまいますね。先に話したように、教育費や老後資金の貯蓄のためにも、月々の支出は抑えたいところです。

そこで私からの提案ですが、次の表、返済期間を35年にしてはどうでしょう? そうすれば、毎月の住居費は管理費・修繕積立金を合わせても約20万~22万円となり、現在の家賃に数千円~2万円ほどを追加する形で済みます。

※A信託銀行の金利は、金利引き下げキャンペーン適用が終了する31年目以降、その時点の金利を適用した固定金利または変動金利が選べます。現時点で31年目時点の金利は予測できないため、表内の試算は2018年10月1日現在の金利で行っています。将来の金利については変動する可能性があります

※A信託銀行の金利は、金利引き下げキャンペーン適用が終了する31年目以降、その時点の金利を適用した固定金利または変動金利が選べます。現時点で31年目時点の金利は予測できないため、表内の試算は2018年10月1日現在の金利で行っています。将来の金利については変動する可能性があります

定年退職時に約1000万円の残債があることになりますが、今は低金利。ローンの残債よりも手元にある現金の額が多くなるようにしっかり残しておいて、定年退職後一括して返済するか、またはゆっくりローンを返済していけばいいのです。どうしても定年退職時までに返済したいということであれば、当初20年間、お子さんの教育費として捻出していた分や以降のボーナスを返済期間の残りの15年間で繰り上げ返済に回せば、定年退職時までかからずに完済できるでしょう。

夫:このシミュレーションは固定金利ですよね? 変動金利のほうが当面の金利が低いので、そちらも検討してみようと思っていたのですが、固定金利が良い理由はありますか?

先生:現在は低金利時代ですから、確かに変動金利を魅力的に感じる人も多いでしょう。ただ、固定金利は30年、35年間の出費を確定できるメリットがあります。借入金額の多い方はわずかな金利アップでも、毎月の返済額が一気に数万円単位で増える可能性もあります。繰り返しになりますが、教育費や老後資金を確保するためには、リスクよりも安心を取ることができる固定金利をおすすめします。

(イラスト/岩間敦美)

(イラスト/岩間敦美)

子どもの教育費を十分捻出しながらも、6000万円の融資を受けて返済したいというKさん夫妻。教育費は進路によっても変わってくるので、確実に貯蓄をするのであれば他の出費額を固定し、計画的に貯められるようにするのがいいようです。住宅費を計算するときは、修繕費や税金のことも含めて出費を把握する必要があります。

また、将来子どもに負担をかけないためには、同時に老後の生活費も準備しておかなければいけません。しっかりと毎月の家計項目と出費を把握し、定年退職時までに住宅ローンを完済するのか、毎月余裕をもって返済し、繰り上げ返済を随時行うことで完済を目指すのかも、夫婦で相談して決めていきましょう。

s-淡河 範明淡河 範明 ホームローンドクター
日本興業銀行、エル・ピー・エル日本証券を経て、住宅ローン専業コンサルティング会社であるホームローンドクター株式会社を設立。利用者の立場にたち、住宅購入時の資金計画、住宅ローンの選び方を新しい方法で提案している。著書に『住宅ローンを賢く借りて無理なく返す32の方法』『住宅ローン借り換えマジック』などがある。元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/11/159950_main.jpg

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「旧耐震」のマンション、買ったらだめですか? 住まいのホンネQ&A(9)

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「旧耐震」のマンション、買ったらだめですか? 住まいのホンネQ&A(9)

新築マンションの価格が高騰している昨今、注目を集めているのが中古マンション。しかし、いくら価格が安くても「耐震性」は気になる人が多いのではないでしょうか。
1981年以前に建てられた「旧耐震」のマンションも市場に多く出回っています。果たしてその安全性は? 選び方は? さくら事務所の長嶋修会長に解説いただきました。
地震大国日本「安全なマンション」の見分け方

2013年以降、新築マンションの価格は大幅上昇。17年の東京都区部における新築マンション平均発売価格は7000万円を超え、庶民には手の届きにくい水準に。一方で中古マンションは4000万円台と、相対的にリーズナブルであることから「中古マンションを買ってリフォーム・リノベーション」を検討する人が増えています。

一般には、価格下落が緩やかになる築15~20年の物件にお買い得感があり、また最近は築30年以上の取引のウエイトも高まっています。というのも、マンションが数多く造られた70年代の物件が市場に出始めているからです。

そうはいっても気になるのは、中古マンションの「耐震性」。いつどこで大きな地震が起きても不思議ではない地震大国日本で、マンションの耐震性についてどう考えたらいいでしょうか。

大きな目安となるのはいわゆる「新耐震基準」を満たしているかどうか。新耐震基準の建物は阪神淡路大震災の際に全壊が少なかったのに対し、旧耐震建物の中には大破・倒壊した建物も多数見られました(国土交通省「住宅・建築物の耐震化に関する現状と課題」より)。

現行のいわゆる「新耐震基準」は、78年の宮城県沖地震における被害を受け、81年に建築基準法が改正されたもの。この基準をかんたんにいうと「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊は免れる」というものです。地震被害が心配な人は81年以降のマンションを選ぶのが基本ですが、いくつか注意点があります。

ここでいう81年とは正確に言えば「81年6月1日以降に建築確認申請が受理されているかどうか」。ところが中古マンションの物件広告には築確認申請受理日の記載はなく、建物の完成(竣工)年月が分かるだけです。なので新耐震基準を満たしているかどうか見極めるには、建築工事期間を考慮に入れる必要があります。マンションは工期が長く、規模にもよるものの、着工から完成までに1~2年近くかかるのが一般的。もし、物件の完成年月が83年もしくは84年以降であれば、新耐震基準で建てられていると考えてよいでしょう。具体的に建築確認申請受理日を知りたければ、不動産仲介会社に調べてもらうか、自治体の担当部署に赴いて尋ねてみましょう。

「旧耐震」でも安全な建物はある

もちろん、新耐震基準以前に建築されたいわゆる「旧耐震」のマンションでも、新耐震基準と同等の耐震設計をしているものは数多くあり、構造面、管理面などを含めて個別にチェックすることが大切。心配ならホームインスペクター(住宅診断士)や建築士など建物の専門家に相談してみましょう。

81年以前の旧耐震の建物なら、耐震診断を受けて、その結果に応じ必要な耐震改修をしているかどうかが評価の一つの目安。

ただし現実には「建物の竣工図面がない」「耐震改修費用がない」「所有者間の合意が得られない」など多くの課題があり、国や自治体も耐震診断や改修に助成措置を講じているものの、耐震診断を受けているマンションはそれほど多くなく、中には耐震診断を受けても改修までは行っていないマンションも多いものです。

地盤のチェックも欠かさずに

もう一つ大事な視点があります。それは「地盤」です。マンションは一般的に地盤の支持層まで、地盤改良を施すため、大きな地震が来てもその影響は限定的であるように設計されていますが、それでも軟らかい地盤の上では建物はより揺れやすくなります。逆に、固い地盤の上に建っていれば、地震の影響は相対的に軽微です。

地盤を調べるのは、国土地理院の「土地条件図」が便利です。住所を入力し「情報」-「ベクトルタイル提供実験」-「地形分類」(自然地形・人口地形)で地盤の傾向を見ることができます。建物の揺れや液状化被害などが心配なら「台地」など相対的に土地が高い位置にあり、浸水や液状化の懸念がなく、地盤の固いところを選びましょう。

国土地理院の「土地条件図」

国土地理院の「土地条件図」

地盤の固いところでも、地面をかさ上げする「盛土」をしていればその限りではありませんので注意が必要です。また、この地盤情報は250メートル基準で作成されており、厳密には個別に地盤調査を行わないとわからないところがありますので、あくまで地盤の傾向がわかるものだということを理解しておきましょう。

よりお得に、安全な中古マンションを購入したい場合、こうした「目利き」のポイントを外さないことが大切です。実際に購入を検討している方は、参考にしてみて下さい。

s-長嶋修_正方形.jpg長嶋 修  さくら事務所創業者・会長
業界初の個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクション(住宅診断)を行う「さくら事務所」を創業、現会長。不動産購入ノウハウの他、業界・政策提言や社会問題全般にも言及。著書・マスコミ掲載やテレビ出演、セミナー・講演等実績多数。【株式会社さくら事務所】元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/11/160041_main.jpg

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料理家のキッチンと朝ごはん[1]後編 調理実習台が主役。道具・器は長く使えるいいものだけを集めた

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料理家のキッチンと朝ごはん[1]後編 主役は調理実習台。道具・器は長く使えるいいものだけを集めた

スタイリングもこなす料理研究家として、雑誌や書籍でさまざまなお菓子のレシピを提案している桑原奈津子さん。前回は、定番の朝ごはんとそのつくり方についてお聞きしました。今回は、桑原家のキッチンと、愛用している調理道具や器について、お話を伺います。【連載】料理家のキッチンと朝ごはん
料理研究家やフードコーディネーターといった料理のプロは、どんなキッチンで、どんな朝ごはんをつくって食べているのでしょうか? かれらが朝ごはんをつくる様子を拝見しながら、美味しいレシピを生み出すプロならではのキッチン収納の秘密を、片づけのプロ、ライフオーガナイザーが探ります。築55年の戸建をリノベーション。月日を経て味わいを増すキッチン

「工場や学校っぽい雰囲気が好き」だという桑原さん。キッチンツールや家具なども、無駄な装飾を省いた業務用のものが好みだそうです。けれども、桑原さん宅のキッチンは「業務用」という言葉からイメージされる無骨さとは無縁の、あたたかみのある雰囲気。

窓枠には、自家製の梅干しやフルーツのシロップ、空き瓶や保存容器などをディスプレイするように並べて収納。インテリアとしてキッチンになじんでいます(写真撮影/嶋崎征弘)

窓枠には、自家製の梅干しやフルーツのシロップ、空き瓶や保存容器などをディスプレイするように並べて収納。インテリアとしてキッチンになじんでいます(写真撮影/嶋崎征弘)

あたたかな日が差し込むダイニングスペースには、雑種のキップル(左)、ハチワレ猫の小鉄(右)、黒猫のクロ(出演拒否)のふかふかベッドが仲良く並んでいました(写真撮影/嶋崎征弘)

あたたかな日が差し込むダイニングスペースには、雑種のキップル(左)、ハチワレ猫の小鉄(右)、黒猫のクロ(出演拒否)のふかふかベッドが仲良く並んでいました(写真撮影/嶋崎征弘)

12年前にリノベーションした築55年の一戸建ての窓枠や柱などを、当時のまま残していることが、ぬくもりを感じさせる一因のようです。そこに、てらいのないスタイリングを得意とする桑原さんの手が加わることで、甘すぎないけれども穏やかでほっとする、独自の世界観が築き上げられていました。

「クリナップ」の調理実習台。大勢で使うことを前提でデザインされたシンクは、手前からでも横からでも洗い物ができる仕様。作業台下の収納スペース奥側にはボウルなどの調理道具、手前には「無印良品」の密閉ボックスを並べ、小麦粉や砂糖のストックを収納(写真撮影/嶋崎征弘)(写真撮影/嶋崎征弘)

「クリナップ」の調理実習台。大勢で使うことを前提でデザインされたシンクは、手前からでも横からでも洗い物ができる仕様。作業台下の収納スペース奥側にはボウルなどの調理道具、手前には「無印良品」の密閉ボックスを並べ、小麦粉や砂糖のストックを収納(写真撮影/嶋崎征弘)

桑原家の家具やキッチンツールの大半は、素材がステンレスもしくは木、色は白でそろえられています。すべてのものを同じタイミングで集めたわけではないのに、素材感や色が統一されているから、ものを出しっぱなしにした「オープン収納」を取り入れていても、キッチン全体がすっきりと、まとまって見えます。

ステンレス製キッチンと調和する、淡いグレーの背面カウンターは「校庭にあった水飲み場のイメージ。小石を混ぜて固めたセメントを、職人さんが手作業で研ぎ上げてくれました」。使い込むほど味の出る素材です(写真撮影/嶋崎征弘)

ステンレス製キッチンと調和する、淡いグレーの背面カウンターは「校庭にあった水飲み場のイメージ。小石を混ぜて固めたセメントを、職人さんが手作業で研ぎ上げてくれました」。使い込むほど味の出る素材です(写真撮影/嶋崎征弘)

「調理台にも背面カウンターにも引き出しが少ないので、新たに引き出し付きのワゴンを買い足しました。仕事場っぽい雰囲気にしたかったので、家具より工具入れが合うのではないかと思って、ネットで探しました。キッチンまわりの細々としたものを整理するのにとても便利ですよ」

「トラスコ」の「エースワゴン」にスパイスやカトラリー、トングなどを収納。同行のカメラマンさんいわく、「フォトスタジオでもよく使われているスチールワゴンです。ぼくもほしい」そうです(写真撮影/嶋崎征弘)

「トラスコ」の「エースワゴン」にスパイスやカトラリー、トングなどを収納。同行のカメラマンさんいわく、「フォトスタジオでもよく使われているスチールワゴンです。ぼくもほしい」そうです(写真撮影/嶋崎征弘)

最初にリノベーションを行ったのは12年前ですが、その後も少しずつ手を加え続けている桑原家。「収納スペースの中に取り付ける予定だった固定式の棚板は、あえて2年ほど設置しなかったんです。実際に使ってみて、ここだと確信できてから取り付けを依頼しました」。3年前には、本格的な修繕工事も実施。当時予算の都合などもあり、建築家と相談のうえ後回しにしていた外壁や屋根などに手を加えたそうです。

ウォールナットのダイニングテーブルは190 x 100cm。テーブルに合わせた6脚のチェアはすべてデザイン違い。アメリカの工場用の照明は、アンティークショップで見つけたもの(写真撮影/嶋崎征弘)

ウォールナットのダイニングテーブルは190 x 100cm。テーブルに合わせた6脚のチェアはすべてデザイン違い。アメリカの工場用の照明は、アンティークショップで見つけたもの(写真撮影/嶋崎征弘)

ダイニングテーブル背面に置いた白い飾り棚は、桑原さんが大学生のときに買ったもの。「薬棚のようなたたずまいが気に入っています」。前面がガラス扉なので、美しいコーヒーカップやティーポットなどを飾りながら収納(写真撮影/嶋崎征弘)

ダイニングテーブル背面に置いた白い飾り棚は、桑原さんが大学生のときに買ったもの。「薬棚のようなたたずまいが気に入っています」。前面がガラス扉なので、美しいコーヒーカップやティーポットなどを飾りながら収納(写真撮影/嶋崎征弘)

気に入ったものを長く大切に使うことで、自然と生まれた”統一感”

前回、桑原さんが朝ごはんをつくる際に使用したキッチンツール一式はこちら。「気に入ったものは長く使うほうです。ゆで卵をつぶすのに使ったザル、野菜の水切りに使ったサラダスピナーは、わたしの実家で使っていたものを譲り受けました。20~30年以上前のものなので、残念ながらメーカーや商品名は分かりません……」

画像の上、2本は「ウェンガー」のブレッドナイフとスナックナイフ。右のゴムベラは、継ぎ目のない一体型を愛用。中央の小さなボウルは調味料や食材をちょこっと入れるのに便利なので、たくさん持っているそうです(写真撮影/嶋崎征弘)

画像の上、2本は「ウェンガー」のブレッドナイフとスナックナイフ。右のゴムベラは、継ぎ目のない一体型を愛用。中央の小さなボウルは調味料や食材をちょこっと入れるのに便利なので、たくさん持っているそうです(写真撮影/嶋崎征弘)

朝ごはんに合わせる水出しコーヒーは多めにつくって、冷蔵庫にストックしているとのことでしたが、「紅茶も多めに淹れて、冷蔵庫にストックしています。水出しコーヒーと同じように、アイスで飲みたいときはそのまま、ホットで飲みたいときは電子レンジで温めればいいだけなので手軽ですよ」。

コーヒーは「KINTO」のジャグに、紅茶は「HARIO」のティーサーバーにストック。コーヒーはストックを切らさないようジャグを2本使い、「1本がなくなりそうになったら、もう1本つくるようにしています」(写真撮影/嶋崎征弘)

コーヒーは「KINTO」のジャグに、紅茶は「HARIO」のティーサーバーにストック。コーヒーはストックを切らさないようジャグを2本使い、「1本がなくなりそうになったら、もう1本つくるようにしています」(写真撮影/嶋崎征弘)

水出しコーヒーは「iwaki」のウォータードリップサーバーで抽出しています。「サーバーの大きさが400mlちょっとなので、1本のジャグに2回分入れています。1回の抽出に4時間、2回だと8時間。時間はかかりますが、放っておくだけでできるので手間はかかりません」

お取り寄せしているコーヒー豆を、その都度「Bodum」のグラインダーで挽いて水出ししているそうです。時間をかけて抽出するため、苦みやエグみの少ない、さっぱりとまろやかなコーヒーが淹れられます(写真撮影/嶋崎征弘)

お取り寄せしているコーヒー豆を、その都度「Bodum」のグラインダーで挽いて水出ししているそうです。時間をかけて抽出するため、苦みやエグみの少ない、さっぱりとまろやかなコーヒーが淹れられます(写真撮影/嶋崎征弘)

「業務用」のキッチンツールのなかにも、桑原さんのお気に入りアイテムがあるそうです。例えば、あちこちで少しずつ集めたステンレスのメジャーカップは「計量するだけでなく、水分の多いものをすくったり、小さなボウル代わりに使ったり。多用途に使えるので便利です。無駄のないデザインで、見た目がシンプルなところも気に入っています」

お気に入りのメジャーカップの奥にあるスケールも業務用。「感度が高いので計量スピードが早く、精度も高いんですよ。業務用なので丈夫で、とても古いものですがまだまだ現役。壊れる気配はありません」(写真撮影/嶋崎征弘)

お気に入りのメジャーカップの奥にあるスケールも業務用。「感度が高いので計量スピードが早く、精度も高いんですよ。業務用なので丈夫で、とても古いものですがまだまだ現役。壊れる気配はありません」(写真撮影/嶋崎征弘)

砂糖・塩を入れている容器も業務用です。ステンレスふたの内側にある凸部分を本体ケースにひっかけると、ふたを開けたままにできるというスグレモノ(写真撮影/嶋崎征弘)

砂糖・塩を入れている容器も業務用です。ステンレスふたの内側にある凸部分を本体ケースにひっかけると、ふたを開けたままにできるというスグレモノ(写真撮影/嶋崎征弘)

工場や学校っぽい雰囲気が好きだとは言っても、「実用的なもの」ばかりではない桑原さんのキッチン。トースターの上に置かれた木製トングは、「はさみ型なのでトーストしたパンをはさみやすいんですよ。トングでトースターから取り出したパンは、木製トレーの上に置くと、溝にパンくずが落ちて散らからない仕組みなんです。かわいらしくて、いいでしょう(笑)」と、おちゃめに語ってくれました。

トーストだけでなく、お菓子やサラダをはさむのにも使いやすいという木製トング。よくあるステンレス製のトングよりあたたかみがあるので、テーブルにそのまま出してもスタイリングの邪魔になりません(写真撮影/嶋崎征弘)

トーストだけでなく、お菓子やサラダをはさむのにも使いやすいという木製トング。よくあるステンレス製のトングよりあたたかみがあるので、テーブルにそのまま出してもスタイリングの邪魔になりません(写真撮影/嶋崎征弘)

大好きな器を大事に収めるために設計した、天井まである大型収納

料理研究家という職業柄、桑原さんはたくさんの食器やグラス、スタイリング小物などをお持ちです。にもかかわらず、そういったものが出しっぱなしになっていないのは、シンク横に造り付けた大型タワー収納のおかげ。よく使う食器や調理道具はシンクのすぐ横の棚にまとめ、あまり使わない雑貨類は上の棚に保管しているそうです。

使用頻度の低いお菓子の型や木製トレーなどは、左側の棚に。スタイリング用に保管しておきたい小物のほか、あまり使わないホットプレートやたこ焼き機などは上段に収納。明確にゾーニングされていました(写真撮影/嶋崎征弘)

使用頻度の低いお菓子の型や木製トレーなどは、左側の棚に。スタイリング用に保管しておきたい小物のほか、あまり使わないホットプレートやたこ焼き機などは上段に収納。明確にゾーニングされていました(写真撮影/嶋崎征弘)

冷蔵庫のサイズに合わせて造り付けているため、収納スペースの奥行きは約70cmと深めです。奥行きが深いと食器棚としては扱いづらいものなのですが、桑原さんは手前に使用頻度の高いもの、奥側に使用頻度の低いものを収めることで、使い勝手をよくしていました。収めるものの高さに合わせて、棚板の幅が微調整されていることも、ものの探しやすさ、出し入れしやすさに直結しています。

グラス、マグ、平皿、小鉢、汁椀など、ジャンルごとにざっくり分類。お皿は似たサイズごとに重ねて収納しています。ココットや小さいグラスなど、こまごましたものはプラスチックのかごにまとめて取り出しやすく(写真撮影/嶋崎征弘) 

グラス、マグ、平皿、小鉢、汁椀など、ジャンルごとにざっくり分類。お皿は似たサイズごとに重ねて収納しています。ココットや小さいグラスなど、こまごましたものはプラスチックのかごにまとめて取り出しやすく(写真撮影/嶋崎征弘) 

「収納スペースがいっぱいなので、以前ほど食器を買わなくなりました。最近はお気に入りのショップに出かけても、見るだけのことが多いです。今使っているものが割れたり、欠けたりしたら、その分は買っていいことにしているんですが、食器って意外と丈夫で長持ちするんですよね(笑)。うちにあるものは、気がつくとどれも長いこと使っているものばかり。使い込むうちに愛着が増すように感じます」

「食器はまとめてそろえず、一枚ずつ集めてもいい」という桑原さん。おすすめは、「お皿なら、白い陶器のもの。磁器よりもあたたかみがあり、使うほどに味がでます。パスタでもカレーでも、おでんでも煮物でも、フルーツでも合いますよ」(写真撮影/嶋崎征弘)

「食器はまとめてそろえず、一枚ずつ集めてもいい」という桑原さん。おすすめは、「お皿なら、白い陶器のもの。磁器よりもあたたかみがあり、使うほどに味がでます。パスタでもカレーでも、おでんでも煮物でも、フルーツでも合いますよ」(写真撮影/嶋崎征弘)

グラスのおすすめは、「うすはりほど薄くないシンプルなタンブラーや、背の低いロックグラスのようなタイプが使いやすいと思います。ビールでもワインでも、お茶でもジュースでも、違和感なく使えます」(写真撮影/嶋崎征弘)

グラスのおすすめは、「うすはりほど薄くないシンプルなタンブラーや、背の低いロックグラスのようなタイプが使いやすいと思います。ビールでもワインでも、お茶でもジュースでも、違和感なく使えます」(写真撮影/嶋崎征弘)

よいものを長く大切に使いたいという想いが深い桑原さん。お母様から譲り受けたもの、大学生のころに買ったもの、アンティークショップで出合ったもの。桑原さんのキッチンには、時間をかけて集めたお気に入りがあふれていました。そのアプローチは、何年にもわたって手をかけ続ける家づくり、キッチンづくりにも表れています。

桑原さんのキッチンや愛用品を拝見し、そのお話を聞くにつれ、改めて「家づくりは急がなくていい」「いきなりゴールを目指さなくていい」のだと感じました。少しずつ積み重ねながら、時とともに味わいを増していく桑原家。ここから紡ぎ出される、素朴ながらも研ぎ澄まされたおいしいお菓子のレシピを、これからも楽しみにしています。

●前編はこちら
料理家のキッチンと朝ごはん[1]前編 オープン収納で取り出しやすく。桑原奈津子さんのサンドイッチレシピ●取材協力
桑原奈津子さん
広島市生まれ。幼少期をベルギーで過ごす。大学卒業後、カフェのベーカリー・キッチンを経て、大手製粉会社に入社。製菓・製パンメーカーへの試作・商品化に数多く携わる。その後、外資系の加工でん粉メーカーで研究職に従事。2004年独立、フリーの料理家に。著書に『小麦粉なしでかんたん、やさしい。お菓子とパン』(主婦と生活社)、『いっぴきとにひき』(大福書林)など多数。
>HP >Twitter >Instagram元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/11/160088_main.jpg

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冬服の収納方法をプロに聞いた! 見せる収納&隠す収納でおしゃれに

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冬服の収納方法をプロに聞いた! 見せる収納&隠す収納でおしゃれに

冬は重ね着が楽しい季節。でも、厚手の洋服は収納場所に困りますよね。かさばりがちな冬の衣類をスッキリ、おしゃれにクローゼットなどに収納する方法を、整理収納アドバイザーの村上直子さんに伺いました。
冬の衣類は、見せる収納と隠す収納のメリハリが大切

厚手のコートやマフラー、肌寒いときに部屋で羽織るカーディガン……冬の衣類はかさばるうえに、体温調節のために着脱する回数も多いもの。ちょっと気を抜くと、玄関やリビングにあふれてしまい、部屋がゴチャゴチャしてきませんか? 整理収納アドバイザーの村上直子(むらかみ・なおこ)さんにその原因を聞くと、第一には、「生活スタイルや動線、使用頻度を考えず、収納場所を決めているから」なのだそうです。

「例えば全ての衣類を、その都度クローゼットにしまうことができれば、スッキリするかもしれません。でも実際には面倒だったり、ニオイや湿気が残って、すぐにクローゼットに入れる気にはならなかったりすることもありますよね。それが散らかる原因。それなら、さっと置くだけの“見せる収納”と、しっかりクローゼットの中にしまって“隠す収納”に分けて、手間を減らすほうが現実的です」(村上さん)

確かに、クローゼットにいちいちしまうのは、面倒くさくてできないことも多いですよね。ではどのように見せる収納と隠す収納を使い分けたらよいのでしょう。今回は実際に村上さんが実践しているアイデアをご紹介します。

整理収納アドバイザーの村上直子さん(写真撮影/蜂谷智子)

整理収納アドバイザーの村上直子さん(写真撮影/蜂谷智子)

見せる収納家具は、インテリアのポイントとしてふさわしいものを

見せる収納としてまず村上さんが見せてくれたのは、おしゃれなカゴ。こちらに部屋で羽織るカーディガンを入れています。見せるための収納には、適当な家具はNG。何も入れていなくてもインテリアとして部屋に置きたいと思うものを、活用するのがポイントだそう。

「見せる収納を部屋のアクセントにしたいなら、いくつかの用途が思い浮かぶような、お気に入りの入れ物を入手しましょう。『部屋着を入れるだけだから』と、ランドリーボックスのような柔らかな収納箱をリビングに置く人がいますが、たくさん入る分、膨らんでだらしない印象になってしまうことも。収納力よりもインテリアとしての価値を重視したほうが、かえって節度のある使い方ができるものです」(村上さん)

さっと脱いだカーディガンや膝掛けを、このカゴへ(写真撮影/蜂谷智子)

さっと脱いだカーディガンや膝掛けを、このカゴへ(写真撮影/蜂谷智子)

見せる収納は部屋のインテリアのポイントにもなる高品質な家具を(写真撮影/蜂谷智子)

見せる収納は部屋のインテリアのポイントにもなる高品質な家具を(写真撮影/蜂谷智子)

外に出しておく衣類は、期間や用途を限定して置きっぱなしを防ぐ

また玄関脇のラックも、雰囲気のあるものを選びましょう。村上さんは、玄関のラックにはお子さんが帰ってきてから学校に行くまでの間、制服を掛けているそう。

「制服以外は、この場所には掛けません。子どもにとって2階の部屋に制服を片付けるのは手間ですし、制服は思いのほか、ホコリや汗がついています。ですから、玄関のラックは干したり消臭スプレーをかけたりして衣類を休ませる場所にしているんです。子どもが学校に行っている間はラックが空になるので、昼間に来客があっても、玄関がスッキリ。ラックは来客にコートを掛けてもらうスペースとして活用します」(村上さん)

玄関にラックを置くと、つい家族の上着類全てを掛けてしまい、こんもりと見苦しくなるもの。使う頻度の高いものだけにするなど、用途を限定することが大切なようです。

また、裏技として、扉の裏を利用した収納方法もおすすめだそう。着たばかりでクローゼットに入れるのはためらわれるコート類は、扉の裏側にフックをセットしてつるしておくと、邪魔になりません。ここにつるすのも、当日着たものに限定し、衣類を休ませたらクローゼットへ。

透かし模様が美しいラックは玄関のイメージを格上げ。衣類を掛けすぎないのがポイント(写真撮影/蜂谷智子)

透かし模様が美しいラックは玄関のイメージを格上げ。衣類を掛けすぎないのがポイント(写真撮影/蜂谷智子)

消臭スプレーなどをセットしておくと、家族が自発的に衣類のケアもするように(写真撮影/蜂谷智子)

消臭スプレーなどをセットしておくと、家族が自発的に衣類のケアもするように(写真撮影/蜂谷智子)

扉の裏を活用した収納は、すぐにでも真似できるアイデア(写真撮影/蜂谷智子)

扉の裏を活用した収納は、すぐにでも真似できるアイデア(写真撮影/蜂谷智子)

クローゼットは、収納用引き出しの容量を最大限に活用する

クローゼットの中が整理できず、いざというときに着たい服が見つからない。服を掘り当てたときにはクローゼットの中がメチャクチャに……整理が苦手な人にはよくあることですが、そういう人は収納用の引き出しの使い方やサイズの選び方を見直す必要がありそうです。

「大前提として、収納ボックスに入れる衣類は、縦に並べて収納しましょう。上に積み重ねて行くと下の服を取り出すたびに引き出しの中を掻き回すことになってしまいますよね」(村上さん)

また、村上さんが特に伝えたいのが、収納用の引き出しのサイズ選びです。

「収納用の引き出しを用途よりも深いものを選ぶ人が多いのですが、上に隙間ができてもったいないですよ。洋服を縦に並べて入れたときにピッタリとおさまる高さを選びましょう」(村上さん)

引き出しの中にデッドスペースができないように、例えば厚めのセーターや夫のボトムスやシーツなどのかさばるものなら36cm、靴下や下着ならば18cmなど、アイテムによって高さを変えることが必要だとのこと。引き出しの中にピッタリと服が入れば、整った印象になり洋服も選びやすいですね。

「収納ケースの選び方のポイントは収納ケースの高さと奥行きの使い方。押入れなどの奥行きがある場合は、収納ケースを前後で使うことをお勧めします。手前がシーズンのよく着る物、後ろを季節外のものにして前後で衣替えをしましょう」(村上さん)

畳んだ衣類を縦に入れてしまえば、洋服が一覧できて服選びが簡単に。高さが引き出しの高さに合っていて、デッドスペースができていないことにも注目(写真撮影/蜂谷智子)

畳んだ衣類を縦に入れてしまえば、洋服が一覧できて服選びが簡単に。高さが引き出しの高さに合っていて、デッドスペースができていないことにも注目(写真撮影/蜂谷智子)

ストール、マフラー類をしまう、ボックスのニ段活用術

冬になって増えてくるのが、ストール・マフラーなどの“巻物”類。ファッションに変化をつけるのに重宝しますが、案外使いたいときに見当たらないことが多いのではないでしょうか。そんな巻物を分かりやすく収納するのが、ボックス使い。シーズンオフのときはクローゼットの上の棚にしまって、出番が来たら箱ごと下に下ろし、出し入れする側を前に倒せば取り出しやすくなります。

「ソフトな箱型収納は、箱自体を折り畳んでしまえる優れもの。使わないときは小さく畳んでおきましょう。輸入家具店などで3つ1500円ぐらいで手に入ります」(村上さん)

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収納ボックスは軽くて取っ手つきで、厚い底がある。まとめやすく高い場所への上げ下ろしもしやすい(写真撮影/蜂谷智子)

収納ボックスは軽くて取っ手つきで、厚い底がある。まとめやすく高い場所への上げ下ろしもしやすい(写真撮影/蜂谷智子)

ニット類はシワにならず、型崩れしないハンガー使いがおすすめ

ニットはシワになりやすく、厚手のものはかさばってしまい、引き出しにしまいにくいもの。着用頻度の高いものはハンガーに掛けることも多いと思いますが、掛け方を間違うと伸びたり、跡がついたりしてしまいます。そこで村上さんが実践しているハンガーの使い方を教えていただきました。

「ハンガーは滑らないタイプのハンガーを使って、畳みながら掛けると跡がつきにくいですよ。ニットを毎回洗うのは手間ですが、着たものを引き出しにしまうのは抵抗があるものです。ハンガーに掛けておけば通気性もよく、お気に入りが見当たらなくなってしまうこともありません」(村上さん)

ニットは畳んでからハンガーに掛ければ肩が伸びることもない(写真撮影/蜂谷智子)

ニットは畳んでからハンガーに掛ければ肩が伸びることもない(写真撮影/蜂谷智子)

衣類を出し入れするのは毎日のことですから、できるだけ無理なく効率よく片付けしたいですね。村上さん流の収納術なら、生活動線や衣類のケアのことも考えられているので、スッキリと部屋が片付くだけでなく、毎日のおしゃれも楽しくなりそうです。厚着になっていく時期に備え、衣類の収納を見直してみませんか?

●取材協力
・kiki*uchi-reset  元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/11/160182_main.jpg

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「子どもは自立」「今よりコンパクトな住まい」を支持する、イマドキの中高年

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「子どもは自立すべき」「今よりコンパクトな住まい」を支持する、イマドキの中高年

住環境研究所が既婚の50代以上の中高年に調査したところ、家族と常に一緒にいるより、それぞれの自立を期待する声の方が大きいことが分かった。夫婦や子どもとの関係はどうありたいと見ているのか、どんな住まいがよいと思っているのか、イマドキの中高年の意識を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「中高年の生活・住まいに関する意識調査」を発表/住環境研究所イマドキの中高年は家族のまとまりより“個々を尊重”する傾向に

既婚で50代以上というと、夫婦だけの生活がこれから長く続くことが想定される。夫婦の関係について聞いたところ、【A】「夫婦といえども一人の時間がほしい、それでこそ仲良く暮らせる」のほうが、【B】「会話があってこそ分かり合える、共有の時間を多く持ちたい」より多く支持されたことが分かった。

この傾向は、年代別では定年前後の「55~59歳」と「60~64歳」、性別では「女性」に顕著に見られたという。仕事中心の夫が定年後に自宅に長くいるようになると、生活スタイルが変わってしまうことから、互いの自立を望む声が多くなるのだろう。特に女性にその傾向が強いわけだ。

自立を期待する人が多いことは、夫婦にとどまらず、子どもとの関係にも影響する。【A】「子どもは社会人になったら自立すべきだ(家を出るべきだ)」と【B】「子どもが結婚してもできればいっしょに(近くで)暮らしたい」のどちらかを聞くと、やはり子どもの自立を望む声が多かった。

子どもに関する意識(出典:住環境研究所「中高年の生活・住まいに関する意識調査」より転載)

子どもに関する意識(出典:住環境研究所「中高年の生活・住まいに関する意識調査」より転載)

ちなみに、筆者の知人の事例だが、同居している社会人の娘に自立をするようにと、一定期間の家賃補助を条件に促したところ、その期間が過ぎて家賃補助を打ち切ったら自宅に帰ってきてしまったという。なんということか!

モノへのこだわりは減少、シンプル・コンパクトな住まいに

夫婦でも親子でも自立を望む声が多数の中高年は、まだまだ働きたい、生きがいをつくったり体力をつけたりしたいという人が多く、元気そのもののようだ。そんな中高年の暮らしや住まい感については、どうだろう?

まず、モノについては【A】「すっきりシンプルに生活したい、不必要なものはどんどん処分する」が【B】「将来使う可能性のあるものは、スペースの許す限り処分せずとっておく」を上回っている。特に【B】は、2000年の58%(ほとんどB40%+Bに近い18%)から2018年の22%(同19%+3%)へと大きく下がっている。モノや過去の思い出へのこだわりが減っているということだろう。

その結果、住まいの広さについても、【A】「今の家は大きすぎる、もっとコンパクトな家に住みたい」と【B】「今の家は狭すぎる、もっと広い家に住みたい」では、わずかに【A】のほうが多く選択された。住居形態別で若干の違いがあり、持ち家一戸建てでは【A】が、賃貸では【B】が多い傾向があったという。

上:モノに関する意識、下:住まいの広さ(出典:住環境研究所「中高年の生活・住まいに関する意識調査」より転載)

上:モノに関する意識、下:住まいの広さ(出典:住環境研究所「中高年の生活・住まいに関する意識調査」より転載)

住まいの広さについては、「どちらともいえない」人が大半で、必ずしも中高年がコンパクトな住まいを好むとは言えないだろう。かつて取材したあるシニア層は、一戸建てからマンションに住み替えたのだが、狭くて困ると言っていた。そのマンションの専有面積は80平米台だったのだが……。“今より”コンパクトな住まいというのが、実際にどの程度の広さを指しているのかは、それぞれで異なるのだろう。

とはいえ、筆者はシニア層の方にはコンパクトな暮らしを勧めている。子どもが泊まるかもしれない部屋は不要だし、過去の思い出の品も断捨離して、掃除などの家事負担を減らして、体力が落ちても快適に暮らせるような住まいを選ぶほうが良いと思うからだ。はたして、皆さんはどうお考えだろうか?

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ロマン実現!? 賃貸ガレージハウスに潜入

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ロマン実現!? 賃貸ガレージハウスに潜入

住居を、生活の場というだけでなく、より趣味や嗜好を楽しむ場としてとらえる人が増えています。そうした層に応えるべく出てきた考え方が「コンセプト賃貸」。基本的な居住空間に、好みの生き方や趣味を楽しめる空間を合体させた賃貸住宅です。
この考え方に基づき、木下工務店レジデンスが開発したのが、住居にガレージを組み込んだガレージハウス。 その実態を探ってみましょう。

住居とガレージを一体化したコンセプト賃貸

木下工務店レジデンスはこれまで、施主(土地所有者)の要望に沿って数々の賃貸住宅を開発・供給していますが、数年前から、社長の中村秀雄(なかむら・ひでお)さんの指揮のもと、「コンセプト賃貸」に乗り出しました。

背景には、生き方や趣味を重視して住宅選びをする人が増えてきたことがあります。ニーズが細分化されている今日、標準的な賃貸住宅だけでは限界があります。また駅から遠いなど、賃貸住宅に不利な土地にはそれを解消するだけの魅力が必要になります。

「コンセプト賃貸の皮切りとして立案したのが、ガレージを賃貸住宅に取り入れたガレージハウスです」と、株式会社木下工務店レジデンス建築部設計課の八木橋毅(やぎはし・つよし)さんは語ります。

通常、ガレージといえば戸建住宅のもの。賃貸住宅では、ガレージを借りるとしても住居から離れた場所になってしまうことがほとんどです。「ならば、住居とガレージをパッケージ化して賃貸で提供すれば、クルマの愛好者に喜んでいただけると考えました」(八木橋さん)

ガレージは多目的に使えるため、居住者には四輪車の愛好者だけでなく、バイク、自転車、カヤック、陶芸など、さまざまな趣味の愛好者を想定しました。

「実は5、6年前、ある施主様のご要望で、車庫付き賃貸を開発したことがあります。この経験で、間口が大きく、柱のない大空間の構造強度を高める方法など、設計ノウハウは蓄積されていました」と、同社の建築部 設計課・課長の向原良幸(むこはら・よしゆき)さんは振り返ります。

設計課では、新たなガレージハウスを企画するに当たって、社内の意見を集め、いくつもの案を提出しては検討を重ねました。さらに女性設計者の意見を取り入れるなど、従来のガレージハウスのイメージを超える商品をめざしました。

その結果、生まれたガレージハウスが「Espace」(エスパース)。大きな空間を、ガレージにとどまらず、幅広い用途に利用できることから、商品名には、フランス語の「空間」を意味する言葉を選びました。

夜のエスパース外観(実際には夜間にガレージを開けることはほとんどないが、開けていただいた)。シックな外観やガレージの広さがよくわかる(写真撮影/織田孝一)

夜のエスパース外観(実際には夜間にガレージを開けることはほとんどないが、開けていただいた)。シックな外観やガレージの広さがよくわかる(写真撮影/織田孝一)

ガレージを使う人の気持ちに沿った、心憎い設計

エスパースの特色は次の点です。

1階のガレージ空間は6m×6.6m、自動車を横に2台並べて駐車できる広さがあります(現在は1台置くタイプも提供しています)。「大きな空間を確保する一方、そのために家賃があまり高くならないようにすることも必要で、そのバランスに苦労しました」(向原さん)

最も大変だったのは、居住空間とは違って、車庫(ガレージ)空間は都道府県条例によって規制されるため、それに合わせたサイズなどの調整が必要なことでした。「そのため、基本構造は同じでも仕上げを微妙に変えなくてはなりません」(向原さん)

ガレージには、入口に電動シャッター、大切なクルマやバイクを盗難などから守る防犯カメラ、居住空間に排気ガスや臭気がおよばないようにする換気扇、クルマの手入れなどのとき便利な大型の手洗いなどを装備しました。また、壁には有孔のペグボードを装着、フックで道具などを掛けられるようになっています。居住者に使いやすくするとともに、賃貸なので、壁に穴を開けないですむようにするねらいです。

ガレージの上の居住空間は、広く感じられるように、続き間のようなシンプルなプランとし、視線が遠くまで届くようにしました。居住空間とガレージは内部階段でつながっているので、行き来するときにいちいち外に出る必要はありません。

外観は従来のガレージハウスにあった倉庫的なイメージをなくし、風格を持たせることをめざしました。

「エスパースの顔でもある正面の電動シャッターには、高級感のある木目調の面材を使用し、2階にはガラス調パネルを用いたバルコニーを設けました」(八木橋さん)。落ち着いた外観色には3つのパターンを用意し、周辺環境に応じて提供できるようになっています。

(写真撮影/織田孝一)

(写真撮影/織田孝一)

ガレージと2階の住居部分は内部の階段でつながっているので、移動のときに外に出る手間は不要だ(写真撮影/織田孝一)

ガレージと2階の住居部分は内部の階段でつながっているので、移動のときに外に出る手間は不要だ(写真撮影/織田孝一)

新築物件を探し歩くなかで、エスパースに出合う

実際にエスパースに入居している方に話を聞いてみました。

大手自動車メーカーの技術者であるT・Nさん(37)は、東京・武蔵村山市にあるエスパースに、2018年9月に入居しました。

「以前は賃貸1DKに住んでいましたが、そろそろ家を建てようと思ったのがきっかけです。クルマ通勤を想定し、土地を探しているとき、たまたま武蔵村山市で建築中のエスパースが目に留まりました」(Nさん)

早速ネットで調べ、間取りなどを確認してみると、趣味のクルマを楽しむ生活ができることが分かり、すぐに問い合わせ、契約に至りました。
「前の住まいではクルマは青空駐車していたので、新築するならガレージ付きと考えていました。しかし新築は長期的に考えなければならない事項が多く、やり直しもむずかしく、迷いました。そんなときにこのガレージハウスに出合って、ゆくゆくは物件を購入するにしても、ここに賃貸で住みたいと思いました。ほぼ即決でしたね」(Nさん)

電動シャッターのあるガレージ入口。上の黒い部分に扉が巻き取られるため、開けたときに照明が隠れるようなことがない。奥に見える作り付けの棚は非常に便利(写真撮影/織田孝一)

電動シャッターのあるガレージ入口。上の黒い部分に扉が巻き取られるため、開けたときに照明が隠れるようなことがない。奥に見える作り付けの棚は非常に便利(写真撮影/織田孝一)

壁に取り付けられた有孔のペグポードは「これから利用するのが楽しみ。使い方を思案中」(Nさん)とのこと(写真撮影/織田孝一)

壁に取り付けられた有孔のペグポードは「これから利用するのが楽しみ。使い方を思案中」(Nさん))とのこと(写真撮影/織田孝一)

水栓二つを持つ大型の手洗いも使いやすい(写真撮影/織田孝一)

水栓二つを持つ大型の手洗いも使いやすい(写真撮影/織田孝一)

2階のリビングルーム。隣接して手前にキッチン、バス、トイレがある(写真撮影/織田孝一)

2階のリビングルーム。隣接して手前にキッチン、バス、トイレがある(写真撮影/織田孝一)

ガレージハウスが変えた週末の生活

Nさんは設備にも満足しています。「電動シャッターは扉を回転させて巻き取るタイプなのが気に入っています。オーバースライダータイプだと、扉の開放時に照明が使えないからです。また換気扇に強弱の二つのモードがあること、二つの水栓と大きめの受けボウルがある手洗いも便利。つくり付けの棚も非常に役立っています」。

Nさんの愛車はキャデラックCTS-V。キャデラックの中でも最もパワフルなエンジンを持つ高級スポーツセダンです。このほか、スバル・レヴォーグを所有しています。

「この家に住むようになってから、週末が楽しみになりました。ガレージで音楽をかけたり、クルマの手入れをしたりと、週末をゆっくり過ごすことが増えました」(Nさん)

部屋の位置にもよりますが、Nさんの選んだ部屋は棟の端に位置し、ガレージ前にかなり広いスペースがあるため、ガレージからクルマを出して動かしやすく、クルマで来る友人を呼ぶときに便利であることにも満足しています。

木下工務店レジデンスではエスパースを、東京、埼玉、千葉、神奈川のほか、大阪、兵庫、名古屋でも展開しています。働き方改革が潮流となり、日本人の個人の時間の充実に注目が集まっています。そうした中で、エスパースからは賃貸住宅の新しい可能性が見えてくるようです。

ガレージに置かれたチェアもお気に入り。週末ここに座り、音楽を聴いたり、クルマの手入れをするのが至福のとき(写真撮影/織田孝一)

ガレージに置かれたチェアもお気に入り。週末ここに座り、音楽を聴いたり、クルマの手入れをするのが至福の時(写真撮影/織田孝一)

チェアから愛車キャデラックCTS-Vを眺める(写真撮影/織田孝一)

チェアから愛車キャデラックCTS-Vを眺める(写真撮影/織田孝一)

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暮らしのエッセイスト・柳沢小実さんの美しい収納と家づくり その道のプロ、こだわりの住まい[2]

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暮らしのエッセイスト・柳沢小実さんの美しい収納と家づくり その道のプロ、こだわりの住まい[2]

初めての家づくりについてまとめた『考えない 探さない ラクして整う住まい考』(KADOKAWA)を2018年9月に上梓したばかりの暮らしのエッセイスト&整理収納アドバイザーの柳沢小実さん。それまでの賃貸の暮らしとこれからの生活を考えて出した答えは、物量は少しだけ少なく、一目で分かる収納に、ということだという。旅好きでもあり、身軽に暮らしたいという思いが詰まったご自宅に伺って、家づくりや暮らしについて話を聞いた。【連載】
料理家、インテリアショップやコーヒーショップのスタッフ……etc. 何かの道を追求し、私たちに提案してくれるいわば「プロ」たちは、普段どんな暮らしを送っているのだろう。プロならではの住まいの工夫やこだわりを伺った。キッチンは、左右からアクセスできるよう、アイランド型に。シンク下の収納はダイニング側に食器を、キッチン側に調理道具などを収納している(写真撮影/嶋崎征弘)

キッチンは、左右からアクセスできるよう、アイランド型に。シンク下の収納はダイニング側に食器を、キッチン側に調理道具などを収納している(写真撮影/嶋崎征弘)

東京都内にある柳沢さん宅は一戸建て。玄関から階段を上がった先には、広々と明るいLDKが広がる。取材陣が伺うと、柳沢さんは、さっとキッチンへ向かってお湯を沸かし、茶器を選んで、茶葉を出して、お茶を入れてくれた。その一連の動きはとてもスムーズだ。アイランド型のキッチンで、ダイニングとの境もないので、左右からアプローチしやすい。さらに、ダイニングとリビングもひとつながりなので、とても開放感がある。あえて壁をつくらなかったという理由が、一瞬にして伝わってきた。
運んできてくれたお茶は、かわいらしい花模様が入った茶器。ここ数年通っている台湾で購入したものだという。

(写真撮影/嶋崎征弘)

(写真撮影/嶋崎征弘)

「すっきり暮らしたいという思いもありますが、こういう食器は我慢できなくて、つい買ってしまうんです。物欲って抑えられないときもありますよね」と笑いながら話す。物欲があるとはいえ、このすっきりした空間はどうやって生まれ、どのようにキープしているのだろう?

ハウスメーカーで実現した「白い箱」のような家

家を建てるに当たって、建築家や工務店などの選択肢があるなかで、柳沢さんはハウスメーカーを選んだ。理由は、蓄積されたノウハウがあることや、長く住むことを考えてアフターケアがきちんとなされることだったという。
「家具はそれまで使っていたものを活用するので、『機能的な白い箱』のようなシンプルな家にしてもらいました」
すっきりと広く感じる理由は、この「シンプルさ」にもあるのかもしれない。造作家具などを必要以上につくらず、壁や床の面が大きく見えているから、開放感を感じられるのだろう。

物の量は「少ない」ではなく「少なめ」に

また、整理収納アドバイザーの資格をもつだけあり、出し入れしやすい収納にも心を配っている。
「この家に引越すに当たって極端に減らしたわけではありません。私はミニマリストではないので、物量が少ないわけじゃないし、物は好きなんです。意識しているのは、『少ない』じゃなく『少なめ』にするということ」と言う。
ほんのちょっと少なめにするだけで、積み重なったり、奥に入り込んだりということがなくなり、探し物をする手間が減るというわけだ。余白が生まれれば、出し入れしやすくなる。だから、お茶を入れるという作業も、スムーズに流れるようにできていたのだ。
物を少なめにキープしつつ、それらを分かりやすく収納しているのも、スムーズな動きの理由のひとつ。例えば、キッチンの引き出しは、どこを開けても、ひと目でどこに何があるかがすぐ分かる。フタ付きの収納グッズなどは使わず、中に入っているものが見渡せるようにしている。

引き出し内は無印良品のケースで仕切っている。カトラリー、木製のスプーン類、小さなもの、レンゲなどと大まかに分類。「奥には使用頻度の低いカトラリーを入れています。すぐには捨てられなくて」(写真撮影/嶋崎征弘)

引き出し内は無印良品のケースで仕切っている。カトラリー、木製のスプーン類、小さなもの、レンゲなどと大まかに分類。「奥には使用頻度の低いカトラリーを入れています。すぐには捨てられなくて」(写真撮影/嶋崎征弘)

旅先で購入したという器は、食器棚の中できちんと並んでいるし、キッチンカウンターの上に置きっぱなしにしていても絵になっている。好きだからといってぎゅうぎゅうに詰め込んだりせず、出し入れしやすい状態にしているのはさすがだ。
「仕事も家事もしなくちゃいけない。忙しいからこそ、簡略化してラクに暮らせるようにと思っています。おおざっぱでめんどうくさがりだからこそ、散らからない工夫をしているんです(笑)」

その考え方はキッチンに限らず、クローゼットや洗面所などのスペースでもしかり。
「好きだから、つい増えてしまう」という洋服は、クローゼットを開ければそのほとんどが目に入るように掛けて収納している。
「物量を把握できるし、畳みジワが嫌だということもあります。それに、洗濯物を畳みたくないという理由もあるんです(笑)。めんどうな家事はできるだけ省きたい。忙しくてもきちんと収納できている状態をキープするためには、効率よく家事をこなさないといけないですから」

洋服だけでなく、バッグ類もS字フックで掛けて見やすく、取り出しやすく。クローゼットは壁一面を3つに仕切り、左が柳沢さん、中央がご主人、右は裁縫道具や梱包材などの日用品を収納(写真撮影/嶋崎征弘)

洋服だけでなく、バッグ類もS字フックでかけて見やすく、取り出しやすく。クローゼットは壁一面を3つに仕切り、左が柳沢さん、中央が夫、右は裁縫道具や梱包材などの日用品を収納(写真撮影/嶋崎征弘)

洗濯物を干すにも、クローゼットに収めるにも同じハンガーを使っているので、洗って乾いた状態のまましまえる。伸びやすいニット類はくるくる丸めてかごの中へ入れているが、それ以外はほぼ掛けているので、こちらも扉を開ければ一目瞭然。家事は自分のライフスタイルに合わせて変えていけばいいのだ。

寝室のキャビネットの上にはアクセサリー類を並べている。その日のコーディネートに合わせ、さっと手に取れて便利(写真撮影/嶋崎征弘)

寝室のキャビネットの上にはアクセサリー類を並べている。その日のコーディネートに合わせ、さっと手に取れて便利(写真撮影/嶋崎征弘)

必要以上の収納スペースはつくらない

扉付きの食器棚は、上部はガラス製なので好きな食器を眺めることができ、下部は木製の扉で料理本を詰め込んでいても圧迫感がない。賃貸時代にデザインやサイズを吟味してやっと見つけた家具で、大切に使われていることがよく分かる。

2つ目のこの食器棚は以前から持っていたほうの奥行きと合うサイズと色、さらに掃除のしやすい脚付きのデザイン、ガラス扉でほどよく物が隠せる、など条件を決めて見つけた(写真撮影/嶋崎征弘)

2つ目のこの食器棚は以前から持っていた方の奥行きと合うサイズと色、さらに掃除のしやすい脚付きのデザイン、ガラス扉でほどよく物が隠せる、など条件を決めて見つけた(写真撮影/嶋崎征弘)

扉を開けると料理本やレシピファイルが並ぶ。扉を締めればすっきり。使う場所の近くにしまうというのも収納の鉄則だ(写真撮影/嶋崎征弘)

扉を開けると料理本やレシピファイルが並ぶ。扉を締めればすっきり。使う場所の近くにしまうというのも収納の鉄則だ(写真撮影/嶋崎征弘)

「料理本はダイニングで読むことが多いので、置き場所は食卓の近くに。大切に使ってきた家具はそのまま新しい家でも活躍しています。家を建てるからといって、必要以上に収納スペースをつくるのは避けました。例えば、階段上の空間を利用すれば、パントリーを設置することもできたんです。でも、果たしてそのスペースを活用するほど物を持つか、きちんと管理できるかを考えたら、私には必要ないという結論になりました」

つり戸棚をつけない代わりに、奥行きの狭い棚板を壁に設置。茶葉などを見せて収納している(写真撮影/嶋崎征弘)

吊り戸棚をつけない代わりに、奥行きの狭い棚板を壁に設置。茶葉などを見せて収納している(写真撮影/嶋崎征弘)

仕事をしながら家事もこなす柳沢さんにとって大切なのは、パッと見て物量を把握でき、出し入れしやすいこと。過剰な収納は必要ないのだ。同じ理由で、キッチンのつり戸棚も設置せず、クローゼットはウォークインタイプはやめてシンプルなつくりにした。そのぶん、キッチンは上部に開放感があって広々と感じるし、寝室もシングルベッドを並べておいても余裕が持てている。

夫婦それぞれの場所をキープして、共有場所はすっきりとリビングテーブルは置かず、床を見せることで広さを感じられるリビングに。「家具を買うときは本当に必要か吟味してから。夫と相談して、なるべく一生使えるものを、と思っています」。ソファはハンス・J・ウェグナーのもの(写真撮影/嶋崎征弘)

リビングテーブルは置かず、床を見せることで広さを感じられるリビングに。「家具を買うときは本当に必要か吟味してから。夫と相談して、なるべく一生使えるものを、と思っています」。ソファはハンス・J・ウェグナーのもの(写真撮影/嶋崎征弘)

一人ではなく、夫と暮らしているからこその工夫も随所にある。「お互いに個人的に持っている物もありますよね。私の場合は家で仕事をするので仕事関係のものや書籍や雑誌など。夫は趣味の山登りの道具類がたくさんあるんです」。柳沢さんのものは仕事部屋があり、夫には寝室の横に通称「山部屋」があるので、それぞれで物量を管理するようにしている。リビングやダイニングに置きっぱなしにしない。そして、お互いにその部屋に関しては干渉しないと決めているので、共有のスペースであるLDKをすっきりさせることができている。

柳沢さんの仕事部屋には好きな書籍や雑誌、勉強中だという中国語のテキストなどが並んでいる。この4畳半ほどのスペースがあるおかげでリビングダイニングには物が置きっぱなしにならずにすむ(写真撮影/嶋崎征弘)

柳沢さんの仕事部屋には好きな書籍や雑誌、勉強中だという中国語のテキストなどが並んでいる。この4畳半ほどのスペースがあるおかげでリビングダイニングには物が置きっぱなしにならずにすむ(写真撮影/嶋崎征弘)

(写真撮影/嶋崎征弘)

(写真撮影/嶋崎征弘)

無理せず、我慢せず、できることを

話を聞いていると、暮らしやすいということは、好きなものを大切にし、無理をしないということが伝わってくる。
「仕事も家事もしているので、いかに気持ちよくラクに暮らせるかが大切。めんどうくさがりだから(笑)、それでもすっきりできる方法を考えてこの状態になったんだと思っています」

ダイニングの食器棚の横にある椅子。ここが夫の仕事かばんなどの定位置。日中は、コード類を収納したバッグを置いている(写真撮影/嶋崎征弘)

ダイニングの食器棚の横にある椅子。ここがご主人の仕事かばんなどの定位置。日中は、コード類を収納したバッグを置いている(写真撮影/嶋崎征弘)

柳沢さんがずっと試行錯誤して実践し続けてきた収納法や家事に対する考え方は、家を建てずとも真似できる工夫がたくさんある。
「プライベートでも仕事でも、海外に行くことが多いので、身軽でいたいというのもあります。パッと準備して出かけたいし、帰ってきたときに片付いている状態のほうが気持ちいいですよね」
物量は少なめにし、物の場所をきちんと決めておくことで、それを実現させている。

シンク下には、好きで集めているという茶器やフルーツ柄のグラスなどを並べている。旅や仕事で行った台湾などで購入したもの。「決してミニマリストではない」という言葉にもうなずける。我慢はせず、暮らしを楽しむことも大切(写真撮影/嶋崎征弘)

シンク下には、好きで集めているという茶器やフルーツ柄のグラスなどを並べている。旅や仕事で行った台湾などで購入したもの。「決してミニマリストではない」という言葉にもうなずける。我慢はせず、暮らしを楽しむことも大切(写真撮影/嶋崎征弘)

物も収納スペースも、自分たちに必要なものを選べばいい。一般的な「こうあるべき」という概念に縛られず、それまでの自分たちの暮らし方をきちんと把握して考えた家だからこそ、今の柳沢さんの暮らしにとてもフィットしているのだろう。
「年内に2回台湾に行くんです」とうれしそうに笑う。きっと旅の準備はてきぱきとスムーズで、楽しんで帰ってきたときには、すっきりとして明るい家が迎えるに違いないのだ。

●取材協力
柳沢小実(やなぎさわ・このみ)
エッセイスト。1975年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。整理収納アドバイザーの資格をもち、雑誌や書籍、新聞などで軽やかな暮らしを提案。現在、読売新聞(水曜夕刊隔週)での連載のほか、セミナーなども積極的に行っている。
>HP
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自然災害でも「一時返済が免除」される住宅ローンがあるってホント?

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自然災害に遭ってしまった時に一時返済が免除される住宅ローンがあるってホント?

大地震に台風、豪雨、土砂崩れ……。近年大きな災害が日本を襲っている。住宅への被害も甚大だ。被災した場合に住宅ローンの返済はどうなるのか、心配する人も多いだろう。そんななか、増えてきているのが、自然災害に遭った時に返済の一部を免除する住宅ローンだ。どういったものだろうか?
災害への備えの基本は火災保険と地震保険

近年、テレビや動画で災害の映像が流れ、胸が痛む機会が多くなった気がする。地球温暖化の影響もあるのだろうが、日本はもともと地震や台風などの被災リスクが高い。そんな日本に住むからには、災害への備えは必須だ。

住宅ローンの災害への備えは、基本は「火災保険」と「地震保険」だ。
住宅ローンを借りる際に、「火災保険」に必ず入らなければならない。ただ、火災保険と言っても、基本となる火災や落雷、爆発、風災、雪やひょうによる損害を補償するだけでなく、水災(台風や豪雨などによる洪水、土砂崩れなど)を補償するタイプもある。補償範囲をどこまで広げるかは加入者が決めることになる。

また、火災保険では補償されない、地震や噴火、津波を補償する「地震保険」は、火災保険に付帯されるもので任意に加入するもの。ただし、地震保険は、被災者の生活の安定を目的とした保険なので、震災後の生活に困らない程度の補償内容となっている。地震による被害を再建できるほどのものではない。

大災害に遭って幸い命は助かったとしても、ローン返済中にマイホームが損壊した場合は、住宅ローンの返済に加えて、家の補修や避難先の確保などさまざまな支出が増える。火災保険・地震保険だけでは補償に限度があるので、それ以外にも備えておく必要がある。

自然災害に被災したときに返済の一部を免除する特約付きの住宅ローンが登場

甚大な被害が増えるなか、被災直後に、被災の程度に応じて一定期間にわたり、住宅ローンの返済を免除する特約を付けた住宅ローンが次々と登場している。

2つの事例を見ていこう。
三井住友銀行の「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(約定返済保障型)」では、半壊で6回分、大規模半壊で12回分、全壊で24回分の住宅ローンの返済が免除され、罹災証明書提出後に引き落とされた分をまとめて払い戻す仕組みとなっている。この特約を付ける場合は、住宅ローンの金利が0.1%上乗せされる。

三井住友銀行「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(約定返済保障型)」(三井住友銀行のホームページより一部転載)

三井住友銀行「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(約定返済保障型)」(三井住友銀行のホームページより一部転載)

新生銀行の「安心パックS」の場合は、「自然災害時債務免除特約」と「コントロール返済」、介護リスクに備える「安心保障付団信」がセットになっている。自然災害時債務免除特約では、三井住友銀行と同様に半壊で6回分、大規模半壊で12回分、全壊で24回分の住宅ローンの返済が免除されるが、銀行に連絡した直後から引き落としが止まり、罹災証明書はそのあとで提出すればよい仕組みとなっている。安心パックSをつける場合は16万2000円の事務取扱手数料が必要だが、金利は変わらない。

いずれの銀行も、新規に住宅ローンを借りる場合に特約をつけることができ、ローン返済中の被災に対して1度限りの免除となる。

また、三井住友銀行では、「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン」で、金利に0.5%上乗せで、地震や噴火、津波で全壊した建物のローン残高の50%相当が免除される「残高保障型」のタイプを選ぶこともできる。

これ以外にも類似の特約を用意している金融機関はあるが、対象となる災害や免除内容、コストなどがそれぞれで異なるので、条件などを詳しく確認してほしい。

自然災害への備えを厚くしたい人は、こうした特約の付けられる住宅ローンを選ぶという選択肢ができたことになる。

なお、もし大規模災害に被災して住宅ローンを抱えて生活に困窮するようなことになった場合は、自己破産を回避し、金融機関に「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(2016年4月より運用)に基づく住宅ローンの免除・減額などを申し出る道もある。

何事もなければ問題なく返済できる住宅ローンであっても、自然災害など自分ではどうしようもない原因で、返済が難しくなる可能性もある。そうしたことにあらかじめ備えておくことが、自然災害の多い日本でマイホームを買う心得だろう。

巨大地震の発生確率が高い現状ではあるが、甚大な自然災害が起きないことを願うばかりだ。

●取材協力
○三井住友銀行「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン」
○新生銀行「安心パックシリーズ/自然災害時債務免除特約」
○自然災害債務整理ガイドライン (政府広報オンライン)元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/11/160305_main.jpg

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住宅ローン選びに変化?ネット専用の住宅ローンの利用率が急増

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住宅ローン選びに変化?ネット専用の住宅ローンの利用率が急増

FRKが公表した最新の「不動産流通業に関する消費者動向調査」によると、住宅を購入した人の銀行やローンの選び方に変化が見られたという。イマドキの購入者像について、調査結果を分析していこう。【今週の住活トピック】
「第23回(2018年度)不動産流通業に関する消費者動向調査」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)ネットで住宅ローンの手続きをする人が急増中!?

この調査は、FRKの会員会社の協力により、首都圏で2017年度に住宅を取得した人を対象にWEBアンケートを実施したもの。当然ながらといっていいのか、不動産情報の収集はインターネットによるという回答は92.1%に達した。

さて、問題のネット専用の住宅ローンの利用状況を見ていこう。

住宅ローンを提供する金融機関のなかには、対面型の店舗がなく、インターネット上での取引を中心に営業している「ネット銀行」も増えている。加えて、対面型の店舗を中心に営業する一般的な銀行のなかにも、インターネットだけで審査申込から契約、融資までのほとんどを行う「ネット専用の住宅ローン」を提供する事例が増えつつある。

まず、「ネット銀行」の住宅ローンを利用している割合を見ると、17.5%に達した。特に、新築住宅購入者では22.5%と高く、前年度調査の15.7%からの増加が目立っている。さらに、「一般の銀行で提供されるネット専用の住宅ローン」を利用している割合は15.4%と、前年度調査の5.8%から急増。新築住宅でも既存住宅でも、いずれの購入者でも大きく伸びているのが特徴だ。

その結果、「両方を利用している」を合わせると、住宅ローン利用経験者全体のうち34.0%がネット専用の住宅ローンを利用したことになり、存在感を増していることがうかがえる。

新築・既存別  住宅ローンのネット利用状況(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

新築・既存別 住宅ローンのネット利用状況(出典/不動産流通経営協会「第23回不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

このようにネット専用の住宅ローンの利用者が増えているのは、金利が低いからだろう。人を介さないことでコストを削減できることに加え、対面型の店舗を持たないネット銀行ではさらなるコスト削減が可能だ。それを金利に反映しているので、より低金利なローンを求めた人が多いという結果ではないかと思う。

ミックスプランで金利上昇のリスクを分散?

次に、住宅ローンの金利タイプの選び方を見ると、民間ローンでは相変わらず「変動金利型」が多く、2018年度調査では59.3%だった。注目したいのは、「ミックスプラン」(9.5%)だ。最近では1割程度の人が常に利用するようになっている。ミックスプランとは、異なる金利タイプを組み合わせて借り入れるもの。どういった組み合わせが多かったかを見ると、「全期間固定金利型と変動金利型」が最多の47.4%、次いで「固定金利期間選択型と変動金利型」が42.1%だった。

金融機関によってはミックスプランを提供していなかったり、提供していても選択できる金利タイプが決まっていたりする場合もある。そのため一概には言えないが、超低金利ではあるが金利上昇リスクが大きい「変動金利型」に、当初の金利をできるだけ長く固定する金利タイプを組み合わせることで、金利上昇リスクの分散を図った人が多いのではないだろうか。

利用した民間ローンの金利タイプ(出典/不動産流通経営協会「第23回不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

利用した民間ローンの金利タイプ(出典/不動産流通経営協会「第23回不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

60代以上では、「大きすぎない家」や「子の近くに住む」が動機に

では、住まいに対する意識も変わっているのだろうか?

今回の住宅購入を決めた動機を聞いたところ、世帯主の年代によって異なる住まい観を見せた。
まず、30代では「もっと広い家に住みたかった」(58.6%)や「資産として家をもちたかった」(50.7%)が多くなっているが、40代・50代・60代以上では「老後のことなどを考えて家をもちたかった」(40代:41.1%・50代:50.8%・60代:40.6%)が多くなり、さらに60代では「住まい方に合わせて大きすぎない家に住みたかった」(31.7%)が多くなるなど、顕著な違いが見られた。

ライフイベント要因で見ると、20代では「結婚を機に家をもちたかった」(43.2%)、30代では「子どもの誕生や成長で住まいが手狭になった」(50.1%)、60代以上では「子どもの独立などで家族が減った」(17.8%)が多いという想定どおりの結果となっているが、60代以上で「子の近くに住むことになった(住みたかった)」が16.8%にも達した点に注目したい。最近話題となっている「近居」についても、調査結果に表れたということだ。

さて、ネット専用の住宅ローンが普及していることを強く印象付けた調査結果だったが、ローンを選ぶ際に低金利ということだけで選んでよいのだろうか?

ネット専用住宅ローンは、好きな時にインターネットで手続きができるといっても、審査を受けるための必要書類をそろえて郵送するなどの手間が発生するし、審査結果が出るまでの時間もそれだけかかる。また、対面で相談したり、直接商品の違いについて詳しい説明を聞いたりといったことが難しい側面もある。ほかにも、提供される住宅ローン商品の種類や事務手数料などの諸費用に違いがあるなどトータルに考えて、“自分に適した住宅ローン”を選ぶという観点を忘れずにいてほしい。

元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/11/160411_main.jpg

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スター猫のお宅訪問![2] フォロワー6万人!インスタで人気の「Niko&Poko」の暮らし

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スター猫のお宅訪問![2] フォロワー6万人!インスタで人気の「Niko&Poko」の暮らし

神奈川県の閑静な住宅街に暮らすスター猫は、インスタグラムをはじめ、写真集やカレンダーも出版するなど“ねむかわいい”ことで人気の、エキゾチックショートヘアのNikoちゃん(メス・5歳)とPokoちゃん(オス・3歳)。飼い主であるMakiさん夫婦とともに暮らしている。【連載】スター猫のお宅訪問!
インスタグラムで人気のキーワードといえば「猫」。多くのフォロワーを魅了するスター猫たちは、どんな暮らしを送っているのだろう。暮らしの工夫を聞いてみた。Instagramより(写真提供/Makiさん)

Instagramより(写真提供/Makiさん)

中古一戸建てを1階はリノベーション、2階はDIY

白い外観に、春にはバラが咲き乱れるという広く美しい庭。まるで写真集から出てきたかのような家。Makiさん夫妻は2011年に築5年の中古一戸建ての物件を購入後、リノベーションをしたのだとか。

Makiさんの家の間取り

Makiさんの家の間取り

「リノベーションをしたのは1階だけ。もともとは上がり框(かまち)の和室があったのですが取っ払って、トイレやキッチンの位置も変えました。リノベーションをお願いしたのは、恵比寿にあるインテリアショップ『PACIFIC FURNITURE SERVICE』のリノベーションサービス。昔からここのアメリカンで無骨な家具が好きだったので、デザイン重視で依頼しました。一番気に入っているのは、トイレ・洗面などの水まわり。壁をペンキ塗りで、床はグレーと白の格子模様にしたいとお願いしました。色みが『PACIFIC FURNITURE SERVICE』ならではのカラーなので、自分ではなかなかできないですよね」

1階のリノベーションはPACIFIC FURNITURE SERVICEに依頼。春にはウッドデッキがバラに包まれる(写真撮影/片山貴博)

1階のリノベーションはPACIFIC FURNITURE SERVICEに依頼。春にはウッドデッキがバラに包まれる(写真撮影/片山貴博)

リノベーションのイメージはMakiさんによるもの。

「お金のことは夫が担当で、テイストについては何も言われることはなかったんです(笑)。もちろんやれなかったこともあります。部屋の壁のペンキ塗りはお金がかかるのでやめました。ただ、今となってはそれでよかったかなと思います。猫を飼っているので壁が汚れてしまうこともあるのですが、ペンキ塗りだと拭くとはげてきてしまって、手入れが大変なので。2階の間取りは変えずに、ドアにペンキを塗ったり取手を取り替えたり、自分たちでDIYしました」

Nikoちゃん・Pokoちゃんの部屋の壁はニュアンスにこだわったブルー系に塗り、韓国のMYZOO「LUNA キャットステップ」でデコレーション。Pokoちゃんはカーテンの隙間から外を眺めるのが好きだそう(写真撮影/片山貴博)

Nikoちゃん・Pokoちゃんの部屋の壁はニュアンスにこだわったブルー系に塗り、台湾のMYZOO「LUNA キャットステップ」でデコレーション。Pokoちゃんはカーテンの隙間から外を眺めるのが好きだそう(写真撮影/片山貴博)

猫も人も心地いい暮らしを

ソファ以外は「手持ちの家具があったのであまり買い替えていない」というこだわりのインテリアに囲まれた、ヴィンテージ感の漂う落ち着いた空間は、NikoちゃんとPokoちゃんにとっても居心地がよさそう。最初の猫・NikoちゃんはMakiさんたちがこの家に引越してから2年目にやってきた。

Nikoちゃんは猫用ベッドの中からお出迎え(写真撮影/片山貴博)

Nikoちゃんは猫用ベッドの中からお出迎え(写真撮影/片山貴博)

「ちょっと顔が潰れたような犬や猫が好きで。以前はフレンチブルドッグを飼いたいと思っていたんです。たまたまエキゾチックショートヘアを飼っている人が載っている本を見て、その瞬間にビビッときて。そこからずっと飼いたいと思いつつもペットショップで見かけなかったので、そのうちブリーダーさんを通して買いたいなと思っていたんですね。ただ、命を預かることが怖く、なかなか勇気が出なくて、それで2年ほどかかってしまったんです。命を守れるかとか、もしも亡くなったとき耐えられるのかとか考えてしまって。それがある日、ペットショップでNikoと出会って、『うちの子だ!』と覚悟を決めたんです」

触ると嫌がるけど姿が見えないとニャーニャー鳴くというツンデレのNikoちゃん(写真撮影/片山貴博)

触ると嫌がるけど姿が見えないとニャーニャー鳴くというツンデレのNikoちゃん(写真撮影/片山貴博)

運命的な出会いによって家族がひとり増えたMakiさん一家。「今までいなかったのが信じられないくらい」という猫との暮らしにもう一匹が加わったのはその2年後だ。

専用の部屋にはベッドも(写真撮影/片山貴博)

専用の部屋にはベッドも(写真撮影/片山貴博)

「Nikoは典型的なツンデレで、普段はプイッとしているのですが、私がちょっと庭に出たりしているだけで寂しくてニャーニャー鳴くんですよね。2匹いたら寂しくないのかなと思ったのがもう1匹飼おうと思ったきっかけです。Pokoが来た最初のころ、Nikoはどうしていいのか分からないという感じでした。Pokoは小さくて力加減が分からないからNikoに馬乗りになったり噛んだりして、それをNikoは嫌がっていたんですけど、いまでは猫パンチをくらわせて威嚇するなど強くなりました(笑)」

リビングには、木製の宇宙船ベッドやダンボールハウス、ハンモックなどがたくさん。いただきものも多く、どんどん増えてきてしまったのだとか。2階には2匹専用の部屋もあり、毎日2匹はそれぞれ好きな場所で心地よさそうに過ごしている。そこには、猫と心地よく暮らすためのちょっとした工夫も。

窓に取り付けられるタイプのハンモックは、外を眺めたり、日差しを浴びながら寝るのが気持ちいいらしく2匹とも大好きだそう。猫のためのダンボール製インテリアはタイのペット雑貨の会社・KAFBOのオリジナル、木製の宇宙船ベッドは韓国のペットグッズデザイン会社MYZOOのもの。どちらも日本で購入可(写真撮影/片山貴博)

窓に取り付けられるタイプのハンモックは、外を眺めたり、日差しを浴びながら寝るのが気持ちいいらしく2匹とも大好きだそう。猫のためのダンボール製インテリアはタイのペット雑貨の会社・KAFBOのオリジナル、木製の宇宙船ベッドは台湾のペットグッズデザイン会社MYZOOのもの。どちらも日本で購入可(写真撮影/片山貴博)

最初はあまり高いところには登れなかったPokoちゃん。KAFBOのダンボール製インテリアに登っているうちに筋力が付いて椅子の上にも乗れるようになったとか(写真撮影/片山貴博)

最初はあまり高いところには登れなかったPokoちゃん。KAFBOのダンボール製インテリアに登っているうちに筋力が付いて椅子の上にも乗れるようになったとか(写真撮影/片山貴博)

窓際のハンモックでくつろぐのが大好きな2匹。ハンモックはAmazonで購入したものにカバーをつけて(写真撮影/片山貴博)

窓際のハンモックでくつろぐのが大好きな2匹。ハンモックはAmazonで購入したものにカバーをつけて(写真撮影/片山貴博)

「Nikoは家具で爪研ぎなどはしないのですが、Pokoは一時期2階の壁をガリガリしていたので、爪研ぎをしないように爪研ぎ防止のビニールを貼ったりもしていました。うちの子はどちらも高いところに登れないので、キャビネットの上などは荒らされなくて済むので助かります(笑)。よくお花が咲く時期には生花を飾っているのですが、NikoもPokoもあまり興味がないようで食べたりしないんですよね。机の上にあっても、よけるものだと認識しているようでよけて歩くんですよ。ラグは敷いていると毛がついて掃除が大変なので、使うときだけ敷くようにしています。水飲み場は、水がたくさんこぼれるとむく材の床が腐ってしまうと思って、まわりに珪藻土のマットを敷いて水はね予防をしています」

2階の洋室にある猫用トイレには珪藻土を塗ったカバーをつけて目隠し。においもそれほど気にならなくなったそう(写真撮影/片山貴博)

2階の洋室にある猫用トイレには珪藻土を塗ったカバーをつけて目隠し。においもそれほど気にならなくなったそう(写真撮影/片山貴博)

日常がより豊かになる猫との暮らし

猫と人がお互いに心地よい関係性で暮らしているMakiさん一家。猫との生活で一番変わったことは、「旅行に行かなくなった」ことだとか。

「Pokoが来てから旅行に行くこともなかったのですが、昨年ひさしぶりに夫婦で一泊旅行に行きました。一泊だったのでお留守番してもらったのですが、もう心配で心配で(笑)。家にはカメラを3台設置しているので、まめにチェックしていました。ごはんのとき以外はほとんど寝ていましたね(笑)。

普段はiPhoneで撮影をすることが多いというMakiさん。カメラを使用することもあるとか(写真撮影/片山貴博)

普段はiPhoneで撮影をすることが多いというMakiさん。カメラを使用することもあるとか(写真撮影/片山貴博)

玄関横にあるNikoちゃんそっくりの人形。愛犬・愛猫のオーダーメイドぬいぐるみをつくる「PECO Hug」がモデル例として作ってくれたものだとか。思わずNikoちゃんと間違えてしまうことも(写真撮影/片山貴博)

玄関横にあるNikoちゃんそっくりの人形。愛犬・愛猫のオーダーメイドぬいぐるみをつくる「PECO Hug」がモデル例としてつくってくれたものだとか。思わずNikoちゃんと間違えてしまうことも(写真撮影/片山貴博)

今まで動物と暮らしたことがなかったので、動物を飼っているみなさんがよく言う『家族の一員だから』という言葉にあまりピンときていなかったんです。けれど、今はすごくよく分かります。性格的にも、手のかかり方も、5歳と3歳の子どもと暮らしている感じ。Nikoはおませな5歳の女の子で、Pokoは甘えん坊で手がかかる3歳の男の子。どちらもかわいいですね。旅行に行けなくなったことを悲観しているわけではなく、日常はより楽しくなりました。今はただただ長生きしてほしい。NikoとPokoが元気で、幸せだなと思ってほしいですね」

庭を散歩するのが大好きだという2匹が外をより見られるように、いつかウッドデッキをサンルームにしたいという夢をふくらませるMakiさん。2人と2匹の暮らしは、これからもさらに快適にアップデートされていきそうだ。

リードをつけて庭を散歩するのが大好きだというNikoちゃんとPokoちゃん。庭に出るとぐるぐると何周も回るそう(写真提供/Makiさん)

リードをつけて庭を散歩するのが大好きだというNikoちゃんとPokoちゃん。庭に出るとぐるぐると何周も回るそう(写真提供/Makiさん)

KAFBOのダンボール製ハウスですやすや寝ていたNikoちゃんとPokoちゃん(写真撮影/片山貴博)

KAFBOのダンボール製ハウスですやすや寝ていたNikoちゃんとPokoちゃん(写真撮影/片山貴博)

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年末に大掃除をやりますか? 気持ちよく新年を迎えたいVS年末は忙しい

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年末に大掃除をやりますか? 気持ちよく新年を迎えたいVS年末は忙しい

花王とダスキンが、年末の大掃除についての調査結果を相次いで発表した。2017年の年末に大掃除をした割合は、それぞれ55.7%/57%と似たような割合だった。つまり、半数近くが年末に大掃除をしなかったわけだが、大掃除をした派・しなかった派で、どういった違いがあるのだろうか?【今週の住活トピック】
「年末大掃除の実施」に関する調査結果を公表/花王
「14回 大掃除に関する意識・実態調査」を公表/ダスキン半数近くが年末に大掃除を実施しなかった!?

昨年の年末に大掃除をしただろうか? それぞれの調査結果は、次のように類似した比率になった。

○花王:年末大掃除実施率57%(2011年調査の66%から大幅ダウン)
○ダスキン:年末の大掃除実施率は55.7%(2005年の調査開始以来2番目に低い比率)

大掃除の実施頻度についてダスキンの調査結果を見ると、「大掃除をほとんどしない」(22.1%)という人もいれば、「2年に1回」(14.9%)、「3年~5年に1回」(5.6%)という人もいて、たまたま2017年には実施しなかったという人もいるようだ。

大掃除の実施頻度(出典/ダスキン「14回 大掃除に関する意識・実態調査」)

大掃除の実施頻度(出典/ダスキン「14回 大掃除に関する意識・実態調査」)

大掃除は普段やらないところまで掃除するチャンス?

ダスキンは「20歳以上の男女」を対象に調査しているのだが、「大掃除をした理由」を聞いたところ、「気持ちよく新年を迎えたいから」という回答が最多の39.4%だった。一方で、専業主婦に限定してみると「普段の掃除で行き届かないところをキレイにしたいから」が44.1%で最多となった。

「普段やらない場所まで掃除したい」という思いは、「20代~60代の既婚女性」に調査した花王の結果も同じで、79%(そう思う36%・ややそう思う43%)の既婚女性がそう思うと回答している。大掃除という建前があるからこそ、普段やらないところまで掃除をしようと思うようだ。

年末大掃除は「普段やらない場所まで掃除したい」と思う割合(出典/花王「年末大掃除の実施」に関する調査結果)

年末大掃除は「普段やらない場所まで掃除したい」と思う割合(出典/花王「年末大掃除の実施」に関する調査結果)

普段からこまめに掃除をしていれば年末に大掃除をする必要はない?

では、「大掃除をしなかった理由」は何だろう?

花王の調査結果によると、「普段からこまめに掃除している」(33%)、「年末は忙しくて時間がとれない」(32%)というものだった。ダスキンの調査でも、「普段こまめに掃除をしているから」が大掃除をしなかった理由の最多ということなので、時間的な問題もあるものの普段の掃除で十分と考えている人も多いことが分かった。

季節に合わせて掃除をするのもおススメ?

ちなみに筆者は、毎年年末に大掃除をしている。やはり「家をきれいにして新年を迎えたい」と思うからだ。といっても最近では、普段おろそかにしている天井や壁、家具のすき間、照明のカバーなどの掃除を加える程度にしている。

その代わりに、季節ごとにしっかり掃除する場所を決めるようにしている。例えば、
・エアコンの掃除は、花粉シーズンが終わり(花粉症なので)冷房を入れる時期が来る前にする。
・窓を開けたままにできる初夏に、カーテンの洗濯や床のワックスがけをする。
・水洗いが苦にならず、油汚れが落としやすい、暖かい時期にキッチンを掃除する。
・豪雨の後、ガラスが濡れているときにガラスを拭く。
あとは、浴室のカビが気になったらそのときというように、気になったときにその場所を掃除するようにしている。

加えて、自分では汚れを落としきれないと思う換気扇(レンジフード)や浴室などは、クリーニング専門業者に依頼している。ただし、スケジュールが調整しづらく高額な年末は外すようにしている。

筆者はこういった掃除を実践しているのだが、一体いつ大掃除をしていると言えばよいのだろうか?

さて、年末が近づいて、そろそろ今年の大掃除が気になるタイミングになってきた。お宅では今年の年末、大掃除で普段やらないところまで掃除するのだろうか、それともこまめに掃除をしているので普段通りの掃除で済ませるのだろうか?どちらにせよ、気持ちよく新年を迎えたいものだ。

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ライター夏生さえりが妄想! 理想の間取りvol.1「付き合って3カ月の恋人たちが住む家編」 

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ライター夏生さえりが妄想! 理想の間取りvol.1「付き合って3カ月の恋人たちが住む家編」 

引越し予定の有無にかかわらず間取図を眺めては、「ああこんな家いいな」「ソファ置くならここでしょ」「え、何この間取り斬新だな?」「このスペース何置くの?」とあれこれ想像したことのある方はいませんか?
さらには「いやぁ惜しいなぁ。これでコンロ横に作業スペースがあれば完璧なのになぁ~」「あぁ~この謎の仕切りがなければパーフェクトルーム!」などと、実際に住むわけでもないのに偉そうに難癖をつけている人はいませんか?

ええ、そうです。わたしのことですね。はいみなさんこんにちは、ライターの夏生さえりです。

今回はSUUMOジャーナルさんにて「理想の間取りと暮らしを書いてみてください」という、わたしのための仕事がやってまいりました。うれしい。うれしすぎる。これまで何度となく間取りを見て妄想しては難癖をつけてきたかいがあった(と思う)!

本記事より3回にわたって、理想の間取りと、そこでの暮らしを精密に妄想してまいります。心の奥に誰にも触れられない(そしてどこにも存在しない)理想の間取りをお持ちのみなさん。「おいおいそこは違うだろ」「いや、これは……同意せざるを得ない」等、ツッコミながらぜひご覧くださいませ。【連載】
恋愛妄想ツイートが話題のTwitterフォロワー数合計19万人の人気ライター・夏生さえりが間取りを見ながら暮らしを妄想。著書に『今日は、自分を甘やかす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『口説き文句は決めている』(クラーケン)、『やわらかい明日をつくるノート ~想像がふくらむ102の質問~』(大和書房)。第1回 恋人と暮らしたい賃貸編

さて第1回目は「付き合いたての恋人と暮らしたい賃貸編」! ってこれは編集部からもらったお題だったのですが、付き合いたての恋人と一緒に暮らすなんて、ちょっと、ちょっと、急展開じゃない!?

いや、もしかしたらイマドキの子は「付き合ってください!」「はい!」「じゃ、次のデートは不動産屋で!」「はい!」とかってサクサク同棲が決まるのかもしれない。山といえば川というように、付き合うといえば住むのかもしれない。「好き!」といえば「住も!」というのかもしれない。

といろいろな可能性を考えてみても(?)正直想像がしづらいので、まずは理想の間取りを考える前に、理想の住み始めを考えてみました。

~以下、無駄な文章となりますので読み飛ばしていただいても構いません~

付き合って1カ月半。今回の彼氏は、これまでの彼氏とは比べものにならないくらい好きだなという自覚があり、今までだったら友達と遊ぶのも楽しいし~仕事も楽しいし~という気持ちで彼氏とは週1会えれば超絶十分っていうかむしろお腹いっぱいっていう気持ちでいたのに、今回の彼氏とは2日に2回の頻度で会っているわけです。こんなのもはや、二人で一つ。いや、むしろあなたはわたし、わたしはあなた状態ですよ。

「なんか毎日一緒にいるね」

とかLINEでもやりとりしちゃうくらいの仲で、でも「舞い上がってはいけない、始まりがあれば終わりもある。それが自然の摂理だから。サークルオブライフ」と自分の中の仙人みたいな人がささやいてくるから、できるだけ冷静を装って過ごすこと2カ月と1週間。

運命の日がやってきます。そう、一人暮らしの家の更新タイミングですね。

「やば、あたし再来月で更新だ。引越そうかなぁ」

って何気なく言ったら、彼が「え、じゃあ一緒に家借りて住む?」とか言ってくるわけです。

え? あーいや、うん、うれしいよ。うれしいんだけど、こういうときってどういう顔したらいいんだろう? 好きだけど、でもほら、もしさ、もしうまくいかなかったらどうする? わたしの中のおつぼね姉さんも、カクテル回して髪をかき上げながら言ってるよ? 「若さの勢いで一緒に住むと大変なのよねぇ」って。たしかに同棲して万が一別れることになったら大変だって聞くじゃん? だから軽い気持ちでは同棲とかしたくないじゃん? でもそんな不吉なこと口にできないじゃん? どういうつもりなのか知りたいけど聞けないじゃん? と思っていると彼が「あ、ごめん、もし心配していたらって思って言うけど、結婚を前提に考えていて……。あ、いや、俺一人で決められることじゃないけど……。その……、軽い気持ちじゃないってことを言いたくて……」って言ってくれて、万事解決。完全無欠。千載一遇。超絶最高。結婚死魔翔。夜露死苦。

それで一緒に暮らす家を探すことにするわけ。そしてトントンと家が見つかって、契約したときにはまだ付き合って3カ月半。え~~~人生ってこんなにトントンと進むものなのぉ~~!?!?!?(もしドラマだったら、ここでオープニングの音楽が鳴る)。

~ここまで無意味でした~

最後まで読んでもらえるか心配になってきました。ここからはサクサクまいりましょうか。

付き合いたての二人、理想の間取りはこれ。

上記のような、付き合って3カ月程度の二人が住むならどんな家がいいか……? 真剣に考えました。ええ、それはそれは真剣に考えましたとも。まずは理想を書き連ねました。

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(最後らへんは間取図とは関係なくなってしまったのですが、)これらを全てかなえてくれる間取りが……こちらです!

(イラスト/岩間淳美)

(イラスト/岩間淳美)

イッツ ア パーフェクトルーム~!!!
これだ! 付き合いたての二人が暮らすのに、これ以上の部屋はない!!! それでは細かく見ていきましょう。

階段上りたい(イラスト/岩間淳美)

(イラスト/岩間淳美)

最初の理想は、ズバリ「階段を上りたい」。
ロフトも憧れるし、リビングと寝室が分かれているタイプのメゾネットも憧れる。なんなんでしょうね、あの憧れは。ちょっと変わった部屋に住んでいる感? 今回は、玄関を開けるとすぐ階段! というパターンにしてみました。

でも、実際は階段ってめんどくさいんですよね。家を出たところで忘れ物に気づいたときとかもう最悪。開けて階段を上り、上ったものは下りなくてはならず、「あ、電気消してなかった!」と気づけば階段を再び上り、上ったものは下りなk…(略)。

一人暮らしだったら、あの「必殺:かかとだけで歩く技」または「必殺:つま先だけで歩く技」を駆使して靴のまま上がってしまうこともあるかもしれないけれど、二人暮らしだとそうもいかない。だから階段なんて、本当は面倒でなんのメリットもない。……と分かっていても、子どもが居ないうちこそ、こういうわがままを詰め込んだ部屋に住みたい……。

むやみに風を感じたい(イラスト/岩間淳美)

(イラスト/岩間淳美)

それから、とにかく多めの窓は譲れない。わたし以前、窓が少なめの小さな家に住んでいたことがあるんですけどね、徐々に穴ぐらに住んでいるような気分になってくるんですよ。よく言えば、地中に棲むモグラさんみたいな感じ。悪く言えば、ただのアリの巣みたいな感じ。隠れ家みたいで悪くないと思う日もあったけれど、やっぱり窓が多ければそれだけ開放的な気持ちになるし、日がさんさんと入る部屋では喧嘩する気もなかなか起こらないのではないか(と、いう願望を込めています)。

「あ~、風きもちいいね~」

って言いたいし、「うん」と言いながら目を細めている彼の顔も眺めたいので、窓は二面にわたっていてほしい。かつ、大きめの窓は、間に壁が入らずつながっているタイプがいい。バーンと開け放つことができるタイプのやつ。

夏は窓を開け放って、広いベランダで一緒に洗濯物を干したりするんだよねぇ。ああ、いい。いい。いい。

スライドするとワンルームのやつ(イラスト/岩間淳美)

(イラスト/岩間淳美)

広いリビングにも当然憧れる。理想は15畳くらい! ……だけれど、実際には金銭的に難しいのも事実。なので、リビングと寝室がつながっていて、スライド式の仕切り扉がついているパターンがいいのではないでしょうか。このとき、重要なのは「スライドしたときに壁が出っ張ったりせず、きれいなワンルームのように使える」という点。このちょっとした違いが、この後の二人の人生を変えることになるのです(嘘です)。

仕切り扉がある家って結構あるのだけれど、扉収納部分が出っ張っていたり、なぜか両側の壁が出っ張っていたりして、きれいな長方形というわけにはいかないことが多い。綺麗であればあるほど家具を置ける可能性が広がるし、なによりスッキリして気持ちがいいはず。

普段は開けっ放しにしておいて、たまに具合が悪くて先に眠りたいときなんかは仕切ればいいよね。

ドアは1つがいい(イラスト/岩間淳美)

(イラスト/岩間淳美)

さらに、お気づきだろうか。リビング、寝室へのドアは1つしかない……ということに。

ドアは多ければ確かに便利なのだけれど、家にいる限り必ず顔を合わせなくてはいけないつくりのほうが絶対いい。例えば些細なことで喧嘩をしたとき。例えば忙しくてすれ違う時間が増えてしまったとき。同じ家にいるのに顔も合わせない時間が増えたら悲しいでしょ?

トイレは遠くに(イラスト/岩間淳美)

(イラスト/岩間淳美)

そして、付き合って3カ月で一番大事なのはトイレがリビングから遠いこと。これは、学校で習ったフレミングの法則よりも大事なことです。

リビングの真横にあるトイレ、寝室に隣接しているトイレ、壁が薄くて音が聞こえるトイレ。ああいうものは、まだ自分を取り繕いたい恋人たちのために消滅してほしい。お腹痛くなったらどうするのよ。安心してトイレに行ける生活をどうか確保してください。

目の前が花屋(イラスト/岩間淳美)

(イラスト/岩間淳美)

さて、窓から見えるもので最高なのは何でしょうか? 海もいい。川もいい。夜景もいいかも。けれどわたしが憧れるのは、「窓から見える花屋」です。

花屋っていいですよね。季節ごとに変わる色とりどりな花たちは眺めているだけでうれしいし、大事な人のためにおそるおそる入っていく男の人も見える。部屋に飾る花に困ることもないし、友人の誕生日プレゼントを買い忘れた夜も大丈夫。

この部屋であれば、ダイニングテーブルの横の窓から見えるといいな。紅茶でも飲みながら「あ、あの人この前も来ていたな」なんて考えていたら「またお花屋さん見てるの?」って彼が聞いてきて。

「おはなやさん」なんてかわいい響き……。と思って、じっと顔を見ていただけなのに「じゃあ俺も買ってこよっかな」とか言って、その日以来ちょこちょこ買ってきてくれるようになるんだよなぁ。

それでいつのまにか花の名前なんて、バラとカスミ草しか知らなかった彼が、「デルフィニウムがきれいだったよ」とか「トルコキキョウがたくさんあった」とか言うようになって、家の中には常に彼が買ってきた生花が……。うっ、うらやましすぎて息が苦しくなってきた。

もはや間取りは関係ないのでは? という声は聞こえないふりをするなら、あとはこれでしょう。

駅前が最高

東京に住んでいる人しかピンとこないかもしれないのですが、(東京に住んでいてもピンとこない可能性があるのですが)、付き合いたてカップルが住んでいてほしいのは東急大井町線沿い。いや、わたしが住みたいだけかも。

二子玉川でもいい。自由が丘でもいい。でももっといいのは、大岡山か尾山台。上野毛でもいいな……。小さな商店街がたくさんあって低い建物ばかりで、世田谷区なのにのどかで、駅がこぢんまりとしている大井町線……。

「駅前のケーキ屋、安かったから」とか言ってお土産買って帰ったら「えーー!? わたしも今日買ったのに!?」とか言って、

「ちなみに何?」
「じゃあ、せーので開けよう」
「「せーの」」

って同じモンブラン買ってきていてほしい。モンブラン地獄。甘んじて受け入れよう。

彼氏が優しい

そして最後の理想は、彼氏が優しい、です。
優しさに勝る間取りなし。ってどこかの慣用句的な言葉もつくりたくなるくらい、結局大事なのは優しさです。互いに想い合って、どうかすてきな暮らしを。

最後に

5000字を超えようとしており、そろそろ終わりにしたいと思うのですが、まだ言いたいことがたくさんある。

カウンターキッチンで一緒にご飯をつくるとか、クローゼットは半分ずつ使おうね!って言っていたのに結局互いのものが入り乱れるようになっちゃうとか、彼が買ってきた謎の置物が部屋の中で浮いているけど許しちゃうとか、観葉植物を買って水やり当番を決めるとか、お風呂掃除をちょっとサボったらすぐにバレて怒られるとか、散らかった部屋を二人で見つめながら「よし、やるか」と顔を見合わせるとか、ソファに座って夜な夜なあいのりを見るとか、買ったお菓子を勝手に食べられたとかくだらない理由で喧嘩したりとか、眠れない夜に一緒に散歩にでかけるとか。

ああ、これから同棲を検討しているみなさん。
少し狭い玄関で、「ただいま!」と言うと「ただいま!」と言う。こだまでしょうか? いいえ、一緒に住んでいる恋人です! という暮らしをエンジョイしてくださいね!!!

付き合いたての二人が暮らす、理想の間取り賃貸編いかがでしたか? みんなの理想も聞いてみたい……。次回は、「ついに検討、理想の間取り購入編」です。お楽しみに!!!!!!

元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/11/160484_main.jpg

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【ファミリー編】品川駅まで30分以内・中古マンション価格相場が安い駅ランキング

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【ファミリー編】品川駅まで30分以内・中古マンション価格相場が安い駅ランキング

JRの新しい駅「品川新駅(仮)」の建設をはじめとする再開発が進められ、注目が集まる品川駅周辺。そんな品川駅まで30分圏内にある中古マンションの価格相場を、前回、前々回と2回にわたりお届けした。今回は品川駅編の最終回、専有面積70平米以上~100平米未満のファミリー向け中古マンションの価格相場を調査。これまで紹介したシングル向け、カップル向けとランクインした駅に違いはあるのか? さっそく調査結果を見てみよう。
●品川駅まで30分以内の物件相場が安い駅TOP12
順位/駅名/価格相場(沿線/所在地/品川駅までの所要時間)
1位 保土ヶ谷 2990万円(JR横須賀線ほか/神奈川県横浜市/25分)
2位 東戸塚 3780万円(JR横須賀線ほか/神奈川県横浜市/30分)
3位 新小岩 3980万円(JR総武線/東京都葛飾区/22分)
4位 新川崎 4350万円(JR横須賀線ほか/神奈川県川崎市/13分)
5位 川崎 4575万円(JR京浜東北線ほか/神奈川県川崎市/9分)
6位 平和島 4675万円(京急本線/東京都大田区/7分)
7位 鶯谷 4680万円(JR山手線ほか/東京都台東区/20分)
8位 京急川崎 4690万円(京急本線ほか/神奈川県川崎市/11分)
9位 市川 4980万円(JR総武線/千葉県市川市/28分)
9位 東神奈川 4980万円(JR京浜東北線ほか/神奈川県横浜市/24分)
9位 蒲田 4980万円(JR京浜東北線ほか/東京都大田区/10分)
12位 立会川 5055万円(京急本線/東京都品川区/5分)

JR横須賀線の隣り合う駅が1位と2位にランクイン

中古マンションの価格相場が最も安かったのは、JR横須賀線で横浜駅の次の保土ヶ谷(ほどがや)駅。専有面積40平米以上~70平米未満の物件を対象にした、前回調査のカップル編でも1位になった駅だ。品川駅に出やすいエリアで中古マンションを探す場合、まず保土ヶ谷駅は要チェックと言えそうだ。

2位は横浜駅から出て保土ヶ谷駅の次の駅となるJR横須賀線・東戸塚駅。駅周辺にはスーパーやショッピングモールなど大型の商業施設が立ち並び、中古マンションの物件数も今回ランクインしたトップ12の駅で最も充実している。

3位はJR総武線・新小岩駅。駅南口側には全長約420mにわたるアーケード商店街が広がり、約140店舗が元気に営業する一帯は東京の下町風情が漂っている。食料品店からドラッグストア、ファストフードなどの飲食店までそろうので、ここに来れば日々の買物をひと通り済ませられるだろう。

新小岩駅(写真/PIXTA)

新小岩駅(写真/PIXTA)

中古マンションの広さによって、狙い目の駅は変わってくる!?

さて、前回のカップル編と見比べると、1位だけではなくランキング上位陣の顔ぶれは似通った結果となっている。2位のJR横須賀線・東戸塚駅はカップル編で4位、3位のJR総武線・新小岩駅はカップル編でも3位にランクインしていた。

そんななか、4位のJR横須賀線・新川崎駅はカップル編、シングル編ともに上位にはランクインしていない。新川崎駅の東側には2015年~2016年に誕生した商業施設「新川崎スクエア」と47階建てタワーマンションがある。これらの建物を眺めつつ歩行者用通路を進むと、JR南武線・鹿島田駅にたどり着く。両駅間は6分ほどで行き来できるので、行先に応じて使い分けると便利だろう。

9位のJR京浜東北線・東神奈川駅もカップル編とシングル編にはランクインしなかった駅。駅の東口側には京急本線・仲木戸駅があり、両駅は歩行者用通路で結ばれている。両駅の間にはスーパーや惣菜店などをテナントに抱えた「シァルプラット東神奈川」があるほか、駅西口側にもスーパーやショッピングモールが点在。また、東神奈川駅からJR京浜東北線で1駅先は横浜駅なので、休日にふらりと家族で横浜に遊びに行きやすい環境だ。

東神奈川駅の中古マンション価格相場は4980万円、横浜駅は5950万円となっており、1駅違うだけで約1000万円も価格相場に開きがあった。

横浜みなとみらい(写真/PIXTA)

横浜みなとみらい(写真/PIXTA)

ちなみに今回調査の起点駅とした品川駅から徒歩15分以内にある、ファミリー向け中古マンションの価格相場は8280万円。それに比べると、1位・保土ヶ谷駅の相場は5290万円も安いという驚きの結果となった。12位の立会川駅でさえ、品川駅と比べると3000万円以上も相場が安い。「品川駅から電車で30分以内の場所」を近いと見るか遠いと見るかは人それぞれだが、30分の時間差で3000万円以上も価格が異なるならば、住まいの候補地として一考する余地はあるだろう。

また、3回にわけて広さ別に価格相場を見てきたが、カップル編とファミリー編のランキングが似通っていた一方で、シングル編とファミリー編ではランクインした顔ぶれはだいぶ異なっていた。シングル向けの物件が安いエリアだからといって、ファミリー向けの広さの物件も安いとは限らない点も頭に入れておくとよさそうだ。

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている品川駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、築年数40年未満、物件価格3億円以下、専有面積70平米以上100平米未満の物件(敷地権利は所有権のみ)
【データ算出期間】2018年4⽉1⽇~2018年6⽉30⽇
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、平日の日中時間帯の検索結果から算出(乗換なし)
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/11/160326_main.jpg

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住まい選びの三種の神器は「モデルルーム・VR内覧・間取図」!?

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住まい選びの三種の神器は「モデルルーム・VR内覧・間取り図」!?

3D対応のゴーグルをのぞいてVR(仮想現実)を体験するというシーンは、エンターテインメントが先行している。しかし、最近では“マンションの内覧”で使われることが増えてきた。そんな「VR内覧」について、スタイルポートが調査をしたのだが、面白い結果が出ている。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」を実施/スタイルポート住まい領域のVR内覧ってどんなこと?

SUUMOでも、VR内覧には早くから取り組んできた。2015年には「SUUMOスコープ」という名称の3D-VRゴーグルを配布して、新築マンションのモデルルームをバーチャルに内覧できるコンテンツを提供する試みをしている。筆者もそのときにVR内覧を体験しているが、その当時はまだ、話題性やトライアルといった側面が先行していたように思う。

ところが、最近では、新築マンションにとどまらず、賃貸住宅や中古住宅の室内をVRで確認したり、CGで家具を配置した室内を見せたりするVRステージングなどの取り組みも広がっている。VRの技術が向上したことなどもあるのだろうが、住まい領域でもVRが活用されるシーンが増えていきそうだ。

参考になるツールは「モデルルーム」「VR内覧コンテンツ」「間取図」

同社の調査では、3年以内に新築マンションを購⼊または検討した1030⼈を対象に、実際にVR 内覧(3Dのコンピュータグラフィック画像による疑似内覧)を体験したうえで、調査に回答してもらっている。

VR内覧ができれば、【A】モデルルームに行く必要はない、【B】モデルルームに行きたい気持ちになる、いずれが近いかを聞いたところ、【A】25%、【B】75%という結果だった。モデルルームに行きたい気持ちになる理由については、「VRの⾯⽩さから興味が湧き、素材や質感などより詳しく知りたくなる」「VRで感じたイメージを、モデルルームでも追体験したくなる」といったコメントが挙がったという。

また、モデルルームで部屋選びの際に参考になると思われるツールを聞いたところ、「モデルルーム」「VR内覧コンテンツ」「間取図」の3つが、突出して高いことが分かった。近い将来、住まい選びの“三種の神器”になるかもしれない。

部屋選びの際に参考になると思われるもの(出典:スタイルポート「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」)

部屋選びの際に参考になると思われるもの(出典:スタイルポート「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」)

ツールの特徴をそれぞれ活かして、住まい選びに役立てる

興味深いのは、それぞれのツールで役割が違う点だ。

「マンションの質感を確認するとき」には、リアルなモデルルームが役立つという回答が段違いに多いが、「購入したい部屋の窓から見える外の景観をイメージするとき」には、モデルルームを抑えてVR内覧のほうが役立つという回答が多くなる。また、「購入したい複数の部屋タイプを⽐較検討するとき」には、間取図がほかのツールより多くなる。

つまり、部屋を選ぶシーンによって、ツールの役立ち感が変わるという結果になっている。

購⼊する部屋を選ぶ際に、最も役に⽴つと思われるコンテンツ(出典:スタイルポート「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」)

購⼊する部屋を選ぶ際に、最も役に⽴つと思われるコンテンツ(出典:スタイルポート「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」)

これには、ユーザーのツールに対する慣れなどの影響もあるのだろうが、やはりツールそれぞれの特徴による影響が大きいと言えるだろう。

実際の質感は実物で確かめられるモデルルームが分かりやすいが、逆に目に見えるものの影響を受けやすい。色の変更などはVR内覧で比較検討したうえで、実物のサイズや質感と重ね合わせて判断するのが間違いないだろう。窓の外の景観はVRの得意とする領域だし、間取りを確かめるなら見慣れた間取図が欠かせない。

リアルと仮想CG映像と平面図。それぞれのツールの特徴を上手に活かして、住まい選びの参考にするというのが、これからのやり方になっていくのだろう。

そうはいっても、住まいを選ぶということは、建物の外観や室内の様子だけでなく、周辺環境を含めた立地やさまざまな住み心地まで含めて選択することになる。実際に現地に足を運ぶことは必須条件だ。そのうえで、さまざまなツールを使って集めた情報を参考に、「こんなはずじゃなかった」ということのないように、「選んで正解」と思える住まい選びにつなげてほしい。

元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/12/160618_main.jpg

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デュアルライフ・二拠点生活[1] 南房総に飛び込んで生まれた、新しい人間関係や価値観

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デュアルライフに飛び込んで生まれた、新しい人間関係や価値観

今までにない、デュアルライフ(二拠点生活)で、人生を充実させている人が増えています。その一人が、川鍋宏一郎さん(34)。東京に本社のある外資系IT企業に勤務し、横浜市内の自宅で四人家族で生活していますが、2年ほど前から、毎週末は、千葉県南房総のもう一つの拠点に通っています。
その動機や経緯、意識の変化などについて、南房総でうかがいました。連載【デュアルライフ(二拠点生活)レポート】
デュアルライフ(二拠点生活)にはこれまで、別荘が持てる富裕層や、時間に余裕があるリタイア組が楽しむものだというイメージがありました。しかし最近は、空き家やシェアハウス、賃貸住宅などさまざまな形態をうまく活用してデュアルライフを楽しむ若い世代も増えてきたようです。SUUMOでは二つ目の拠点で見つけた暮らしや新しい価値観を楽しむ人たちを「デュアラー(二拠点生活者)」と名付け、その暮らしをシリーズで紹介していきます。田舎の不動産探しをきっかけにシェアハウスを知る

「もともとキャンプや自然が好き。しかし住んでいるのは綱島(横浜)の住宅地。あるとき、東京近郊でも少し田舎に行けば、空き家物件が300万円くらいと驚くような低価格で買えることを知って、探し始めたのがきっかけです。同じころ、建築ライターの馬場未織さんの書かれた書籍『週末は田舎暮らし』にも影響を受けました」と川鍋さん。

川鍋宏一郎さん。東京に本社のある外資系IT企業に勤務。キャンプ好きが昂じて南房総と綱島のデュアルライフをするようになった(写真撮影/内海明啓)

川鍋宏一郎さん。東京に本社のある外資系IT企業に勤務。キャンプ好きが高じて南房総と綱島のデュアルライフをするようになった(写真撮影/内海明啓)

手に入れた住宅を改修して週末に過ごすことを想定、まずはDIYのスキルを身につけようと、ワークショップを探すうち、見つけたのが、ヤマナハウスのウェブサイトでした。「関心のある人が月一回集まって、古民家の改修に取り組もうとしていました。これだ!と思って、参加したんです」

千葉県南房総市三芳にあるヤマナハウスは、シェアオフィス運営を手がけるHAPON新宿の創設者の一人、永森昌志さんが主宰しメンバーと共同運営しています。約2500坪もの里山にある古民家を改造したので『シェア里山』と呼び、年齢も職業もさまざまな人たちが週末に集まっては、田舎暮らしを楽しんでいます。

千葉県南房総の広大な里山にある古民家を改修してできたヤマナハウス(写真撮影/内海明啓)

千葉県南房総の広大な里山にある古民家を改修してできたヤマナハウス(写真撮影/内海明啓)

ヤマナハウス室内。川鍋さんら、このハウスのメンバーがリフォーム。週末に集まって野良仕事などした後は、ここで食事を(写真撮影/内海明啓)

ヤマナハウス室内。川鍋さんら、このハウスのメンバーがリフォーム。週末に集まって野良仕事などした後は、ここで食事を(写真撮影/内海明啓)

大工仕事の腕も上がった川鍋さんは現在、ほぼ毎週末をヤマナハウスで過ごしています。「綱島から車で約1時間20分ほど。金曜の夜にヤマナハウスに着き、日曜日の朝に戻るというパターンです」。交通費は高速を使って1回に5000円~6000円程度です。
現地では、ここの仲間のほかに、移住してきた人たちも加わり、野良仕事やバーベキュー、飲み会などを楽しんでいます。古民家の改修・改造は今も続いています。取材中も、多くの人が集まり、にぎやかに新たな物置を建設中でした。

綱島の自宅付近も緑の多い住宅地ですが、南房総とは比べものになりません。「人工的な自然ですし、落ち葉を集めての焚き火もできません。キャンプにも親しんできましたが、キャンプ場は管理されていて、薪のための木一本切ることもできません。しかしここでは自由にいろいろなことができます」

ヤマナハウスは2015年の春にスタート。古民家改修、畑仕事、裏山の整備・手入れなどを行い、それが都市ではできない“遊び”にもなっている(写真撮影/内海明啓)

ヤマナハウスは2015年の春にスタート。古民家改修、畑仕事、裏山の整備・手入れなどを行い、それが都市ではできない“遊び”にもなっている(写真撮影/内海明啓)

取材の日は、ヤマナハウスの前に物置小屋を建築中で川鍋さんもお手伝い(写真撮影/内海明啓)

取材の日は、ヤマナハウスの前に物置小屋を建築中で川鍋さんもお手伝い(写真撮影/内海明啓)

5歳、7歳になる二人の娘さんを連れて行くと、自然のなかでキックボードをしたり、川や砂浜で貝殼を拾ったり、虫やカエルをつかまえたりと、都会ではできない生活を楽しんでいるそうです。
「妻は福島の自然の豊かなところの出身ですから、最初は、今さらなぜ田舎に?と感じたようですが、協力してくれました。たくさんの人が集まっているので、代わる代わる誰かが子どもの相手をしてくれるのもうれしいところ。このヤマナハウスには、疑似(大)家族的な側面がありますね」

左)川鍋さんの娘さんたち。自然のなかで遊び、生きものに触れる機会が増えた。右)農作業のお手伝いも貴重な経験(画像提供/川鍋宏一郎)

左)川鍋さんの娘さんたち。自然のなかで遊び、生きものに触れる機会が増えた。右)農作業のお手伝いも貴重な経験(画像提供/川鍋宏一郎)

新しい人間関係が生まれ、都会での価値観が変わる

こうしたデュアラー(二拠点生活者)としての生活は、川鍋さんの意識にも変化をもたらしました。
「それまでの生活では絶対知り合えなかったはずの、年齢、職業などが多種多様な友人ができました。それぞれが得意なことが違うので、教え合い、手分けする“タスク分散”もできます。僕は酒が好きなので、果実酒のつくり方を伝えたりしています」

川鍋さんは、東京都品川・戸越銀座の育ちです。祭りのときは御輿(みこし)担ぎに駆り出されるなど、人間関係は今もしっかり残っていて、いわゆる“都市生活者の孤独”とは無縁です。「でもそれは、上下のある縦の人間関係なんです。一方、シェアハウスでの人間関係はフラットで平等。これも心地よさの理由かもしれません」

モノはお金を払って買う、という発想も揺らぎました。必要なモノはつくる、誰かと交換する、壊れたら自らの手で直す、そうした発想になりました。「すぐ近くに移住して養鶏をしている人がいるので、そこに酒を持って行き、卵を分けてもらうといったこともあります」

都心のIT企業に長く勤務し、千葉県君津市に移住して、毎月ヤマナハウスに足を運んでいる高橋新志さん(52)も、「犬の散歩に一周歩いたら、いただいた野菜で両手がいっぱい、といったことが起こります。ここは物々交換経済がまだかなり機能しているんですね。だから東京の基準で考えたら低い収入だとしても、豊かな暮らしがしていけるんです」

ヤマナハウスの土間部分に設けられたキッチン。床部分のコンクリートも職人さんに教わりながらメンバーが手伝って敷いた。(写真撮影/内海明啓)

ヤマナハウスの土間部分に設けられたキッチン。床部分のコンクリートも職人さんに教わりながらメンバーが手伝って敷いた(写真撮影/内海明啓)

スタディツアーでやってきた都内の大学生との交流会。ヤマナハウスメンバー以外にも地元の方も加わり、多様な世代、多様なライフスタイルの人達と関わりが持てる場になっている(写真提供/ヤマナハウス)

スタディーツアーでやってきた都内の大学生との交流会。ヤマナハウスメンバー以外にも地元の方も加わり、多様な世代、多様なライフスタイルの人たちとかかわりがもてる場になっている(写真提供/ヤマナハウス)

ヤマナハウスには女性の参加者もいます。東京のSI企業に勤務している女性SEは、「東京では体を動かして何かをするという実感が得られず、自然に引かれて参加しました。月に1、2回ですが、こちらに来ると元気になりますね」。
前述の高橋新志さんは、東日本大震災以降、自給自足的な生活拠点を持つことへの関心が高まってきたことを感じるそうです。「川鍋さんはキャンプという下地があったので、田舎の生活になじみやすかったように思えます。ご家族の協力があることも大きいですね」(高橋新志さん)

田舎の生活に人間関係は大切、と語るのは、高橋保雄さん(54)。千葉県船橋市に住み、都会の企業に勤務し、ヤマナハウスには月に2度くらい来ています。「川鍋さんが若いときから、こういう生活を試せるのはうらやましいですね。僕が若いころはそうした機会を得られず、粛々と会社人間を続けました。実はそれで精神的に参ったことが、デュアルライフに切り替えたきっかけになったんです」(高橋保雄さん)

ヤマナハウスのメンバーのほか、南房総が気に入って移住してきた人たちも加わっての作業。田舎で、職業や背景の異なる仲間と出会うのも楽しみだ。得意な人、慣れた人が教えて、みんなで学んでいく関係になっている(写真撮影/内海明啓)

ヤマナハウスのメンバーのほか、南房総が気に入って移住してきた人たちも加わっての作業。田舎で、職業や背景の異なる仲間と出会うのも楽しみだ。得意な人、慣れた人が教えて、みんなで学んでいく関係になっている(写真撮影/内海明啓)

ヤマナハウス室内。築250~300年ほどの古民家を再生・改修したもの。古い窓枠や廊下の木材はそのまま利用している(写真撮影/内海明啓)

ヤマナハウス室内。築250~300年ほどの古民家を再生・改修したもの。古い窓枠や廊下の木材はそのまま利用している(写真撮影/内海明啓)

個人としても家と土地を借りる

川鍋さんは、移住を考えたところから始まって、デュアラーとなりましたが、移住を諦めたわけではありません。移住も視野に入れ、家を借りることもしています。 
「このヤマナハウスの大家さんのご紹介で、私個人が半年ほど前から近くに家を借りました。家と言っても1500~2000坪の敷地も込みで、東京で言えば駐車場代程度。将来はここにキャンプ場をつくりたいと考えているんです」

川鍋さんがこのような紹介で、土地と家を借りることができたのも、ヤマナハウスが地元に定着し、そこで活動していることで、地元の人たちの信頼を得るようになったからと言えそうです。
「ヤマナハウスのみんなで、地域で年に1回行われる草刈りに参加したり、祭りでは御輿を担いだりしています。地元の青年部の方々には喜んでいただけていますね。そこからまた知り合いを紹介されるなど、人の輪が広がることもあります」

ヤマナハウスとは別に、すぐ近くに川鍋さんが借りた家。小屋や車を何台も停められる広いスペースも。これに手を加え、将来は仲間とのキャンプの拠点にしたいと考えている(写真撮影/内海明啓)

ヤマナハウスとは別に、すぐ近くに川鍋さんが借りた家。小屋や車を何台も停められる広いスペースも。これに手を加え、将来は仲間とのキャンプの拠点にしたいと考えている(写真撮影/内海明啓)

裏山で長年放置されて広がってしまった竹をみんなで刈って整備。新しい農法に挑戦したりなど新しい取り組みにも挑戦している(写真提供/ヤマナハウス)

裏山で長年放置されて広がってしまった竹をみんなで刈って整備。新しい農法に挑戦したりなど新しい取り組みにも挑戦している(写真提供/ヤマナハウス)

将来の移住のためのトライアルとしても有効なデュアルライフ

川鍋さんのお話からは、デュアルライフに必要なヒントがいくつも見出せます。自ら工夫する力、お金ではない価値を大切にすること、家族の協力、地元の方々との良い人間関係などです。
またデュアルライフは、都会の仕事をやめずに実現できるので、特別な富裕層でなくても可能です。また将来の移住を考えている人にとっては、トライアルとしても有効な手段と言えるでしょう。

南房総の里山の自然は豊か。季節の変化を感じる生活が、都会の変化だけでは得られない変化を与えてくれ、翌週の活力につながっている(写真撮影/内海明啓)

南房総の里山の自然は豊か。季節の変化を感じる生活が、都会の変化だけでは得られない変化を与えてくれ、翌週の活力につながっている(写真撮影/内海明啓)

●取材協力
HAPON新宿元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/12/160604_main.jpg

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「品川駅」まで電車で30分以内、家賃相場が安い駅ランキング 2018年版

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「品川駅」まで電車で30分以内、家賃相場が安い駅ランキング  2018年版

家の立地を選ぶときに重視するのは、毎日利用する通勤や通学の便の良さだろう。ビジネス街へのアクセスは、ぜひとも押さえておきたいポイントだ。都心の大動脈・山手線の新駅の建設が進む品川エリアは、2027年開業予定のリニア中央新幹線ターミナルが計画され、大規模な再開発が進行中の注目地域。そこで、品川駅へ30分以内で行ける、ワンルーム・1K・1DKの物件を対象にした、家賃相場の安い駅ランキングを分析。それぞれの特徴や、狙い目の場所を考えてみた。
品川駅まで電車で30分以内、家賃相場の安い駅TOP20

順位/駅名/家賃相場/(沿線名/駅の所在地/品川駅までの所要時間(乗り換え時間を含む)/乗り換え回数)
1位 保土ヶ谷 5.63万円(JR横須賀線、湘南新宿ライン/神奈川県横浜市保土ケ谷区/25分/0回)
2位 白楽 5.70万円(東急東横線/神奈川県横浜市神奈川区/30分/1回)
3位 京急新子安 5.80万円(京急本線/神奈川県横浜市神奈川区/23分/1回)
4位 東白楽 6.10万円(東急東横線/神奈川県横浜市神奈川区/28分/1回)
5位 三ツ沢下町 6.15万円(ブルーライン/神奈川県横浜市神奈川区/29分/1回)
6位 弁天橋 6.20万円(JR鶴見線/神奈川県横浜市鶴見区/23分/2回)
6位 神奈川新町 6.20万円(京急本線/神奈川県横浜市神奈川区/26分/1回)
8位 新子安 6.22万円(JR京浜東北線/神奈川県横浜市神奈川区/20分/1回)
9位 小島新田 6.30万円(京急大師線/神奈川県川崎市川崎区/29分/1回)
9位 戸塚 6.30万円(JR東海道線ほか、ブルーライン/神奈川県横浜市戸塚区/27分/0回)
9位 生麦 6.30万円(京急本線/神奈川県横浜市鶴見区/21分/1回)
12位 菊名 6.42万円(JR横浜線、東急東横線/神奈川県横浜市港北区/27分/1回)
13位 子安 6.50万円(京急本線/神奈川県横浜市神奈川区/25分/1回)
13位 小岩 6.50万円(JR総武線/東京都江戸川区/29分/1回)
15位 天王町 6.60万円(相鉄本線/神奈川県横浜市保土ケ谷区/30分/1回)
15位 市川 6.60万円(JR総武線/千葉県市川市/28分/0回)
15位 綱島 6.60万円(東急東横線/神奈川県横浜市港北区/24分/1回)
15位 鹿島田 6.60万円(JR南武線/神奈川県川崎市幸区/19分/1回)
19位 新川崎 6.65万円(JR横須賀線、湘南新宿ライン/神奈川県川崎市幸区/13分/0回)
20位 国道 6.70万円(JR鶴見線/神奈川県横浜市鶴見区/20分/2回)
20位 日吉 6.70万円(東急東横線・目黒線、グリーンライン/神奈川県横浜市港北区/21分/1回)
20位 東戸塚 6.70万円(JR横須賀線、湘南新宿ライン/神奈川県横浜市戸塚区/30分/0回)
20位 産業道路 6.70万円(京急大師線/神奈川県川崎市川崎区/28分/1回)
20位 矢向 6.70万円(JR南武線/神奈川県横浜市鶴見区/16分/1回)
20位 花月園前 6.70万円(京急本線/神奈川県横浜市鶴見区/20分/1回)
20位 鶴見小野 6.70万円(JR鶴見線/神奈川県横浜市鶴見区/21分/2回)

ランキングは大半が横浜市、1位は横浜駅徒歩圏内

ランキングの大半を占めたのは、神奈川県横浜市の駅だった。1位の保土ヶ谷駅はJR横須賀線の沿線のため、乗り換えなしで品川駅まで着くことができる。逆方向へ向かえば、鎌倉も乗り換えなしで約20分。また隣駅は横浜駅で、駅間距離は3kmほど。散歩がてら歩いて横浜駅を利用することも十分可能だ。また相鉄線の天王町駅までも約1kmで、2路線を使うこともできる。交通の便で判断するなら、穴場と言えるかもしれない。

元々が宿場町のため、街並みにはさりげなく、歴史を感じさせる碑なども。古くから住んでいる人も多く、下町人情を感じさせる商店街などもある。

商店街は駅の西口にもあるが、駅から少し距離はあるものの洪福寺松原商店街は「横浜のアメ横」とも称される品ぞろえと安さで人気のスポット。毎日正午から午後6時まで歩行者天国になるため、小さな子ども連れでもゆっくり買い物を楽しめるだろう。

2位の白楽駅は、SUUMO「関東 住みたい街ランキング2018」で調査した住みたい沿線ランキングの沿線として2位にランクインしている東急東横線の駅。4位に入った東白楽駅とは隣駅で、ともに各駅列車しか停車しないが、横浜駅までの所要時間は電車で約5分であり、十分便利な立地といえそうだ。

白楽駅は神奈川大学の最寄駅であるため、学生だけでなく単身者にとってうれしい安価な定食屋さんや、チェーンの飲食店が充実している。深夜まで営業している店もあるが、駅から少し離れると閑静な住宅街で、単身者向けの物件も数多い。

六角橋商店街(写真/PIXTA)

六角橋商店街(写真/PIXTA)

駅から旧綱島街道沿いにある六角橋商店街は、レトロな雰囲気が気になる商店街だ。メーン通りとアーケード街が並行して成り立っており、昭和を舞台にした映画やドラマの撮影地になることもあるとか。生鮮食品や日用品のほかに、お酒が飲める中古レコード店などユニークなお店があり、みんなでライブや野宿などを楽しむ「ドッキリヤミ市場 夜のフリーマーケット」などのイベントも開催されている。独り暮らしの気楽さと他者とのふれあいが両立できるのは、大きな魅力だ。

住みたい街ランキング上位の街のすぐそばに、穴場を発見

品川までの所要時間が一番短いのは、19位の新川崎駅。ランキング内で唯一、15分を切る。
1位の保土ケ谷駅と同じくJR横須賀線の沿線のため、乗り換えも必要ない。SUUMO「関東 住みたい街ランキング2018(総合)」6位の武蔵小杉駅とは湘南新宿ラインの隣駅で、距離は約3km。人気エリアに住みたいけれど予算が……という人におすすめだ。

武蔵小杉駅周辺の風景(写真/PIXTA)

武蔵小杉駅周辺の風景(写真/PIXTA)

武蔵小杉駅の再開発がひと段落したため、近年は新川崎駅周辺の再開発が注目されるように。2015年には駅に接続した大型商業施設「新川崎スクエア」が開業。大規模なマンションの建設も増えている。

駅周辺では、深夜1時まで営業しているスーパーもあり、多忙なビジネスパーソンや共働きのDINKSには心強い。また、15位の鹿島田駅までは600m超しか離れておらず、「新川崎スクエア」は鹿島田駅とも接続している。南武線は川崎まで乗り換えなしで利用できるため、小さな子どもを連れて川崎の商業施設「ラゾーナ川崎プラザ」などへ遊びに行く際にも快適だろう。

神奈川県以外でランクインしている13位の小岩駅と15位の市川駅は、ともに千葉方面に延びる総武線の沿線。品川とは反対の東方向だが東京駅へも20分以内で出られ、利便性は文句なしだ。

小岩駅は、駅周辺は歓楽街が目立つものの、下町情緒があふれる純喫茶店や商店街などがあり、ディープな魅力にあふれる街。対して市川駅は、駅直結のショッピングセンターやスーパーなどが充実し、街中には公園も多く、ファミリーが住みやすい街だ。

人気のある駅や沿線は、当然家賃が高くなる。しかし、最寄駅の駅名がメジャーか否かだけにこだわらず、エリアとして見まわしてみれば、人気のある場所周辺にお手ごろ価格で住むことは十分に可能だ。「名より実をとる」のは、賢い生き方の選択のひとつ。お気に入りの家探しの秘訣も、同じといえるだろう。

●調査概要
【調査対象駅】品川駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2018/6~2018/8
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/12/160615_main.jpg

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150万円で買える!? 格安別荘の活用法と注意点

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150万円で買える!? 庶民にも手が届く別荘の活用法と注意点

別荘はお金持ちの贅沢――。そんな固定概念を覆すような物件をしばしば見かけるようになった。例えば長野近辺の別荘地で土地建物込み150万円、といった別荘が売りにでていることも決して特殊ではない。こういった別荘を活用する方法はあるのだろうか? それとも何か落とし穴があるのだろうか? 別荘保有者と専門家に聞いた。
現在の別荘のトレンドは? 専門家に聞いてみた

“別荘が高級”というイメージは、既に過去のものかもしれない。日本の人口減にともなって空き家が増えているが、それは別荘に関しても例外ではない。軽井沢などの著名な別荘地でさえも100万円台の物件を多く見かけるようになった。憧れの別荘ライフが格安で手に入るとなると、飛びつきたくなる人は多いだろう。では実際、こういった物件はどのような人が買っているのだろうか。

リゾート物件のポータルサイト「別荘リゾートネット」を運営する唐品知浩(からしな ともひろ)さんは、「現在の別荘事情は二極化してきている」という。

「格安別荘ばかりではなく、昔からあるイメージ通り、広々として暖炉があるような、高級な別荘を保有する文化は健在です。一方で、リーズナブルな別荘を購入してセルフリノベーションするなど、お金をかけずに別荘ライフを楽しんでいる人も増えてきているのも確かです。別荘地を管理する側も多様化しており、2018年6月15日から施行された『民泊新法』に則ったかたちで、民泊を運営できるようにしている別荘地もあります。例えば『オーナーズフォレスト白河別荘地羽鳥湖高原』などは、管理会社が一元化して民泊の運用を管理しています」(唐品さん)

都会での生活に息苦しさを感じ、自然豊かな場所にも拠点を持ちたいと願う人は、若い世代にも多い。そんな新しいタイプのニーズに、柔軟に対応している別荘地もあるようだ。

しかし実際に別荘を購入するとなると、普通の住宅購入とは違う注意点や、普通はかからない経費がかかることもある。特に格安別荘に多い築古の別荘は、安いからと飛びつくと失敗することもありそうだ。実際に築古の別荘を所有する人に聞いた。

安く別荘を手に入れるときに、気をつけなければならないことは?

「150万円や200万円の格安別荘に安易に飛びつくと、思ってもみなかった経費がかかるかもしれません」。そう話すのは、別荘保有者で不動産関係のライターもしているアサクラさん。

「僕の場合は親戚が保有していた築50年の別荘を譲り受けたのですが、維持管理には思った以上の経費がかかっています。僕の別荘ライフを見て『自分も別荘を持ちたい』と決意した友人もいるのですが、一緒に150万円の別荘の内見に行ってみると、修繕にも管理にも経費がかかりそうで、安易に格安の別荘を購入するのは危険だなと思いました。もう100万出して250万円で設備の整った物件を買った方が、その後の経費を考えると安くつく場合もあるのです。 結局その友人は予算をアップして約300万円の別荘を購入しました」(アサクラさん)

アサクラさん自身は祖父から受け継いだ別荘を所有しているが、築50年の家を修繕するのに、結局250万円程かかったそうだ。それに加え、所有にともなうランニングコストも必要になってくる。

築古の別荘を購入後、どのくらいコストがかかった? 所有者に聞いてみた

アサクラさんは東京西部の山間部に、祖父から受け継いだ築50年の別荘を持ち、春は月に1回、夏は毎週のように家族とそこを訪れ、仕事をしたりくつろいだりして、活用している。なんとも羨ましい生活だが、築古の物件を実際に住めるようにするまで修繕するには、かなりの金額がかかったそうだ。

初期修繕費用の詳しい内訳を教えてもらった。

2009年「シロアリ駆除と床下換気扇の設置」約98万円
2011年「ハクビシン駆除」約15万円
2011年「足場を組んで屋根の修繕と外壁塗装」約77万円
2015年「離れの床の補強工事」約9万円
2016年「シロアリ防除剤・防カビ剤の散布」約32万円
2018年「水道管と水栓の修理」約24万円(と、その先の出費も)

総額250万円以上かかり、譲り受けた物件とはいえ、格安別荘を購入する以上の費用がかかっている。

「格安別荘を購入したとしても、メンテナンスの悪い物件を購入すると、同額かそれ以上の修繕費がかかることは覚悟しておかねばならないでしょう。なかでも注意したいのは屋根のコンディションと水まわりです。屋根は僕も77万円かけたように、修繕が高額になりがち。また水まわりの修繕も高額です。下水道のない場所に住む場合には浄化水槽を取り付けるのが一般的ですが、この設置には100万円程かかるのです。ですから屋根の葺き替えが必要だったり浄化水槽がなかったりする物件は、その後に必ずかかってくる費用を価格に上乗せして考える必要がありますね」(アサクラ さん)

また一般的な住宅でも必要な、税金やライフラインなどの維持コストもかかる。参考までにアサクラさんの、年間の別荘維持経費の内訳も教えてもらおう。

火災保険や固定資産税 約8万円
水道光熱費 約9万円
交通費や通信費 約19万円

アサクラさんの場合、別荘の維持コストは年間に約36万円かかっているということだ。当然住んでいる間にどこかが壊れれば、その修繕費もかかる。使わないと家が荒れるため定期的に訪れる必要があるが、そのための交通費もばかにならない。

また物件のある場所が別荘地にあれば、その地域を管理している会社に管理費を払う必要があると指摘するのは唐品さんだ。

「管理会社によって価格はさまざまですが、ゴミ収集や道路の整備は管理会社に委託するので、その為の費用がかかります。加えて留守中の窓開けや、寒冷地であれば冬場にバス・トイレ・湯沸かし器など水を使うところが凍って設備が使えなくなってしまわないよう『水抜き』といって、設備をばらして水を抜く作業なども頼む場合は、追加の費用もかかります」(唐品さん)

家や所有地のメンテナンスには手間がかかる。別荘地に物件を持ち、それらを代行してもらう場合にはそのための費用がかかり、アサクラさんのように自分で行う場合には、交通費などの費用や手間がかかるということだろう。

別荘を持つということは、購入費用以外にもかなりのお金がかかることが分かった。しかし唐品さんもアサクラさんも、「別荘を持つことは、人生を豊かにする」と口をそろえる。確かに、都心の喧騒を離れて、自然と触れ合える居場所があることは貴重だ。またその地で新たな人間関係を築くことができれば、人生の幅も広がりそうだ。

現代は、セルフリノベーションを楽しむことで修繕経費を削減したり、民泊などの制度を利用して使わない間はシェアしたりと、なるべくお金を使わない別荘スタイルも生まれつつある。加えて、唐品さんによれば「今は団塊の世代が別荘を手放すタイミングなので、市場に出回っている中古の別荘の物件数は多い」とのこと。

決して安易な選択肢ではないが、都心で家を買うことを考えれば、別荘を持つ金銭的ハードルが低いことには変わりがない。これを機に新たなスタイルで別荘を使いこなしてみるのも、面白いかもしれない。
 

●取材協力
・別荘リゾート.net
・なんでも大家日記@世田谷元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/12/160701_main.jpg

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「人間は自然の一部」。八ヶ岳で体験型教育を推進する古川和女史のデュアルライフ あの人のお宅拝見[11]

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「人間は自然の一部」。八ヶ岳で体験型教育を推進する古川和女史のデュアルライフ あの人のお宅拝見[11]

私が知り合ったころの古川和(カズ)さんは、主婦から起業して体験型科学教育『リアルサイエンス』を、科学者の秋山仁氏らと子ども向けに行っていました。最近は「大人向けに、企業のチームビルディングなんかもやってるのよ!」と、相変わらずアクティブな姉御の行動力に驚くばかり。東京とのデュアルライフを楽しむ、八ヶ岳麓のお宅へ伺って話を聞くことにしました。連載【あの人のお宅拝見】
「月刊 HOUSING」編集⻑など長年住宅業界にかかわってきたジャーナリストのVivien藤井が、暮らしを楽しむ達人のお住まいを訪問。住生活にまつわるお話を伺いながら、住まいを、そして人生を豊かにするヒントを探ります。「アメリカで衝動買いした家具を置くために建てたような家」!?

和(カズ)さんの本宅は東京で、八ヶ岳の麓・大泉町に別荘を建てられたのは約20年前。子ども2人の子育て時代から山登りが好きで、野外活動教育の仲間もいるこの辺りが気に入っていたそうです。
今回も東京で午前中の仕事を終えてから車を走らせ、15時過ぎにこの取材。日常的に行ったり来たりとデュアルライフ(二地域居住)を楽しむアクティブな61歳は、私の憧れです。

クリームイエローに赤のトリムが映える大屋根の外観。取材日は曇りで冴えなかったので、青空の写真を送ってもらいました!(写真撮影/古川和さん)

クリームイエローに赤のトリムが映える大屋根の外観。取材日は曇りで冴えなかったので、青空の写真を送ってもらいました!(写真撮影/古川和さん)

八ヶ岳の家はフィンランドメーカー『ホンカ・ジャパン』のログハウス。山小屋のような丸太組みのログと違って、角型ログで、モダンな雰囲気。断熱性は北欧仕様なので秋冬は冷え込む八ヶ岳でも問題なし。

大きな家の小さな玄関、個性的なデザインは童話の世界のよう(写真撮影/片山貴博)

大きな家の小さな玄関、個性的なデザインは童話の世界のよう(写真撮影/片山貴博)

玄関を入った先に広がる、吹抜けの大空間リビングでお話を伺うことにしました。

ログの構造壁にタイルの床、赤い薪ストーブのある吹抜けのリビング(写真撮影/片山貴博)

ログの構造壁にタイルの床、赤い薪ストーブのある吹抜けのリビング(写真撮影/片山貴博)

私の隣にはアインシュタインの人形が鎮座。アメリカの友人からプレゼントされたそう(写真撮影/片山貴博)

私の隣にはアインシュタインの人形が鎮座。アメリカの友人からプレゼントされたそう(写真撮影/片山貴博)

「やっぱりログだから、内装の木肌が柔らかいし香りも良いのよね。20年たったけど」

お子様も独立され、ますます活動的な和さん。私はテニスでもご一緒し、パワフルなプレーに圧倒されています!(写真撮影/片山貴博)

お子様も独立され、ますます活動的な和さん。私はテニスでもご一緒し、パワフルなプレーに圧倒されています!(写真撮影/片山貴博)

20年前と言えば2人のお子様もまだ10代のころ、40歳そこそこで別荘を持つ余裕に驚き……。
「そういうことでも無いのよ!子どもにも良い場所とは思っていたけれど。実はアメリカの友達が家を売るときに、家具を処分するって言うから『私が買う!』って言っちゃって(笑)。しばらく、置く場所もなくアメリカの倉庫で保管してて、やっとここに置ける家が建てられたの」

イエローがアクセントカラー。壁には絵画より、窓の景色

旦那さまの赴任地だった米国バークレーの友人から買った、お気に入りの家具が10点以上。
「特にこのイタリア製テーブルのデザインが斬新で気に入ったの。このイエローが、インテリアのテーマカラーになりました」

イタリアンモダンのテーブルに合わせたイエローの椅子、右奥にはイエローの冷蔵庫をあえてキッチンの外、斜めに置いてフォーカルポイントに(写真撮影/片山貴博)

イタリアンモダンのテーブルに合わせたイエローの椅子、右奥にはイエローの冷蔵庫をあえてキッチンの外、斜めに置いてフォーカルポイントに(写真撮影/片山貴博)

ほかには、アメリカンBIGサイズのベッドが2階の寝室にありました。窓もベッドに合わせたデザインです。

私もここに泊めていただきましたが、おばさんでもお姫様気分(写真撮影/片山貴博)

私もここに泊めていただきましたが、おばさんでもお姫様気分(写真撮影/片山貴博)

「絵画も好きだけど、この家は壁に絵を掛けていないの。窓にカーテンをせず、窓枠を額縁にした外の景色が絵の代わり」
朝から夜、春夏秋冬。刻々と変化する景色を眺め、過ごす豊かさがここにはあるようです。

和さんが撮った、窓からの富士山や紅葉。一時として同じ景色は無い、自然の醍醐味(だいごみ)(写真撮影/古川和さん)

和さんが撮った、窓からの富士山や紅葉。一時として同じ景色は無い、自然の醍醐味(だいごみ)(写真撮影/古川和さん)

八ヶ岳界隈に住まう、クラフト&アクティブな人々も魅力

子育て主婦だった和さんは、35歳のときにNPO法人『Teaching Kids to Love the Earth』を立ち上げ、体験型学習を実践してこられました。
「アメリカ在住のころはヨセミテへキャンプに行ったり、東京では多摩川で網を投げて魚を獲ったり。子どもと遊ぶのも本格的、自然の中で育つと人への優しさが備わるものよ」
人間も自然の一部だと理解できるようになると、子どもも大人も物の見方が変わるということです。

赤い薪ストーブがリビングのアイコン。床暖房もあるが、薪を焚くと朝までホンワカと暖かい(写真撮影/片山貴博)

赤い薪ストーブがリビングのアイコン。床暖房もあるが、薪を焚くと朝までホンワカと暖かい(写真撮影/片山貴博)

「八ヶ岳界隈はすてきなお店や、面白い人が多くてね。とてもすてきなご夫婦が営まれているインテリアのお店があるの!」と、和さんお気に入りの北欧ヴィンテージ家具ショップが『SKOGEN』。
そのワークショップに参加してつくったペーパーコード編みの椅子が、暖炉の前に2脚(旦那さまと1脚ずつ作製)。

「薪をくべるときに座るとちょうどいい高さなの」。トレーを置くと、サイドテーブルとしても使える優れもの!(写真撮影/片山貴博)

「薪をくべるときに座るとちょうどいい高さなの」。トレーを置くと、サイドテーブルとしても使える優れもの!(写真撮影/片山貴博)

インテリアや手づくりが大好きな和さん。この家を建てるときも、自分で建材・設備を選びにショールームへかなり足を運んだそう。

2階のトイレには、和さんが探して来たパステル色のタイルが貼られていた(写真撮影/片山貴博)

2階のトイレには、和さんが探して来たパステル色のタイルが貼られていた(写真撮影/片山貴博)

「ほかにも東京から移住されたご夫婦で、きれいな畑をやっているお友達がいてね。今日も来る前に寄ったら、いろいろと採れたての野菜を下さったの」

早速、頂いた野菜をダイニングテーブルで並べ始め……(写真撮影/片山貴博)

早速、頂いた野菜をダイニングテーブルで並べ始め……(写真撮影/片山貴博)

八ヶ岳らしいグリーン・アレンジメント完成! 器は人気のプリンセス社(オランダ)ホットプレート(写真撮影/片山貴博)

八ヶ岳らしいグリーン・アレンジメント完成! 器は人気のプリンセス社(オランダ)ホットプレート(写真撮影/片山貴博)

ダイニングルームには、大人数が座れる大きなテーブル。「ここで企業研修をすることもあるの。自炊もチームビルディングの一環」

10人くらいはゆったり座れるテーブル。ここからも、外の緑が目に入る開放的なダイニング(写真撮影/片山貴博)

10人くらいはゆったり座れるテーブル。ここからも、外の緑が目に入る開放的なダイニング(写真撮影/片山貴博)

そしてダイニングの奥には、コンサバトリー(サンルーム)もあります。

「ここは朝、気持ちいいのよー」。朝日が入る、東側にあるコンサバトリー(写真撮影/片山貴博)

「ここは朝、気持ちいいのよー」。朝日が入る、東側にあるコンサバトリー(写真撮影/片山貴博)

食器も好きな和さんコレクションで、朝食風にセットしてもらった(写真撮影/片山貴博)

食器も好きな和さんコレクションで、朝食風にセットしてもらった(写真撮影/片山貴博)

和さん自身がそうであるように、八ヶ岳界隈にはアクティブに何かをするために住まう人が多いよう。そんな活力のあるコミュニティーが、この避暑地ならではだなぁ……と感じました。

老若男女、グローバルな出会いの場になればという想い

海外の子どもたちが環境体験学習を行うのに、ここを拠点にすることもあるようで、こんな色紙を発見。

このお宅のデッキにあふれる子どもたち。つづられた感謝の言葉が並ぶ(写真撮影/片山貴博)

このお宅のデッキにあふれる子どもたち。つづられた感謝の言葉が並ぶ(写真撮影/片山貴博)

色紙の写真は、このデッキ。ハンモックも気持ち良さそう(写真撮影/片山貴博)

色紙の写真は、このデッキ。ハンモックも気持ち良さそう(写真撮影/片山貴博)

「外国人をお招きすることもあるので、一応和室もね」、2階の和室には野点(のだて)の茶道具も収められています。

琉球畳に和紙のランプでモダンな和室。洋風窓も意外と調和(写真撮影/片山貴博)

琉球畳に和紙のランプでモダンな和室。洋風窓も意外と調和(写真撮影/片山貴博)

今回敷地内に、以前来たときには無かった物体や小屋が増築されていました(!?)。

高さ3mの壁、これを道具無しにチームで協力して全員登り切るという課題用

高さ3mの壁、これを道具無しにチームで協力して全員登り切るという課題用

シーソー、複数人が乗ってバランスを取るもの(写真撮影/片山貴博)

シーソー、複数人が乗ってバランスを取るもの(写真撮影/片山貴博)

「これも体験学習のひとつ。大人も子どもも自然のなかで身も心も鎧を脱ぎ捨てて、ひとりではできないことを助け合いながら達成する。人それぞれ得意不得意があって当然、お互いの理解が深まっていくのがチームビルディング」
子どもたちも、そんな体験から“多様性”を肌で実感することになるのだそう。

「今日は曇っていて残念ね」と空を眺めながら、「今度はここでテニス合宿するから、いらっしゃいよ!」と誘ってくれた(写真撮影/片山貴博)

「今日は曇っていて残念ね」と空を眺めながら、「今度はここでテニス合宿するから、いらっしゃいよ!」と誘ってくれた(写真撮影/片山貴博)

八ヶ岳のお住まいも拡張するなか、「今度は東京の家を建て替える計画をしたいの! いつか娘が子育てするのなら二世帯住宅にしたいと思って。子どもも大人も一緒に勉強できるような書斎をつくりたい、天井まで書棚があってハシゴに登って本を取るような……」と、目を輝かせる和さん。その夢は、いくつになっても尽きることが無さそうです。

古川 和
八ヶ岳エナジェティック倶楽部代表
1957年大阪府生まれ。東京都在住、結婚・子育てを経て1992年子どもの環境教育、科学教育の会Teaching Kids to Love the Earthを起業。2000年一橋大学大学院國際企業戦略研究科(非常勤講師)。後に、アクションラーニング研究所を立ち上げ、企業のチームビルディング研修を実施。カリフォルニア大学バークレー校の体験型の科学教育の手法を日本に普及し、NPO法人体験型科学教育研修所を立ち上げ2016年まで活動。2017年より株式会社EHRのエグゼクティブコンサルタント。(文部科学省政策評価有識者会議メンバー、東京学芸大学監事(非常勤)など)。
趣味はテニス、俳句、茶道、美術鑑賞と幅広く、多彩な人脈を持つ。座右の銘:格物致知
株式会社EHR
北欧家具「SKOGEN」元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/11/159887_main.jpg

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「TSUTAYA BOOKSTORE ホームズ新山下店」レポート。家具店・ホームセンターと本屋が融合!?

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「TSUTAYA BOOKSTORE ホームズ新山下店」レポート。家具店・ホームセンターと本屋が融合!?

2018年12月7日(金)、家具専門店・ホームセンター「島忠」「HOME’S」を展開する島忠とTSUTAYAがコラボレーションし、「ホームズ新山下店」がライフスタイル提案型の店舗へと生まれ変わった。「TSUTAYA BOOKSTORE ホームズ新山下店」店内では、商品の家具が「寛ぐ」「整える」などテーマに沿った12個の小部屋でスタリングがされており、本やコーヒーを楽しみながら使用感を試すことができる。その内容とは?(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

あなたはどんな暮らしがしてみたい? テーマに沿ってライフスタイルを提案

従来の「島忠」「HOME’S」といえば、商品が広大なフロアにズラリと並ぶ様子が思い浮かぶ人が多いはず。今回のリニューアルでは、商品ではなくライフスタイル提案型へとシフト。「寛ぐ」「眠る」「整える」「育む」「食べる」「癒し」「彩る」「作る」「贈る」のテーマに沿って“12のルームスタイル”を新設。それぞれのテーマごとに家具・本・雑貨を融合させた空間をつくり、理想のライフスタイルを体験しながら買い物を楽しめるようになった。

「魅せる、収納。」(テーマ:整える)のスペース。家具はすべて、もともと島忠で扱っていたものでコーディネート(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「魅せる、収納。」(テーマ:整える)のスペース。家具はすべて、もともと島忠で扱っていたものでコーディネート(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

収納にまつわる書籍をあわせて展開(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

収納にまつわる書籍をあわせて展開(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

例えば、「魅せる、収納。」(テーマ:整える)では、あえて美しく飾ることができる棚などとともに、収納グッズ、収納の実用書を組み合わせて提案する。「学び舎は、リビング。」(テーマ:育む)は、子どものリビング学習をテーマにしたローソファやコンパクトソファと組み合わせた空間。リビングで家族が楽しくコミュニケーションを取れる雑貨や、地図本や工作の本、図鑑などもあわせて展開している。ほかにも、「シアタールームを作ろう。」(テーマ:寛ぐ)、「ペットと暮らす。」(テーマ:寛ぐ)などバラエティ豊かなラインナップ。
それぞれのスペースでは、各テーマにあわせたワークショップやイベントが行われる予定とのこと。

「ヨコハマブルー。」(テーマ:寛ぐ)のスペースでは海とデニムのブルーをイメージし、外国の情緒にあふれる横浜にどっぷり浸れる、デニム生地を活かした棚やラグなどを展開(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「ヨコハマブルー。」(テーマ:寛ぐ)のスペースでは海とデニムのブルーをイメージし、外国の情緒にあふれる横浜にどっぷり浸れる、デニム生地を活かした棚やラグなどを展開(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「インテリアで遊ぶ。」(テーマ:作る)には手軽にできるDIYアイテムがそろう(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「インテリアで遊ぶ。」(テーマ:作る)には手軽にできるDIYアイテムがそろう(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

マスキングテープの無料サンプルも充実しており、自由に工作をして試せる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

マスキングテープの無料サンプルも充実しており、自由に工作をして試せる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

本やコーヒーを楽しみながら家具をお試し

また、同店舗内にはBOOK & CAFE「WIRED KITCHEN with フタバフルーツパーラー」も併設されており、テイクアウトしたコーヒーなどのドリンクや食事を、家具売り場で商品を試しながら楽しむことができる。本やコーヒーを気になる家具で心ゆくまで楽しむのもよし、「作る」のスペースで創作意欲が湧いたら1階の資材売り場でDIYのための材料を調達するのもよし。思い思いのお店の使い方をしてみたい。

「WIRED KITCHEN with フタバフルーツパーラー」で使用しているチェアも購入可(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「WIRED KITCHEN with フタバフルーツパーラー」で使用しているチェアも購入可(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「グリーンがある暮らし。」(テーマ:癒し)のスペース。12のルームスタイルで食事やドリンクを楽しめば、理想の暮らしをよりリアルに疑似体験できる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「グリーンがある暮らし。」(テーマ:癒し)のスペース。12のルームスタイルで食事やドリンクを楽しめば、理想の暮らしをよりリアルに疑似体験できる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

また、広々としたキッズスペースを設けているほか、専用カートを使用すればペットと一緒にショッピングを満喫することができる(カフェスペースのみ同伴不可)。買い物をするだけでなく、家族みんなで休日を楽しめる憩いの場となりそうだ。

店内にある本20万冊。児童書は3万冊で、横浜エリア最大級の品ぞろえ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

店内にある本20万冊。児童書は3万冊で、横浜エリア最大級の品ぞろえ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

広々としたキッズスペース。ボーネルンドの商品や知育玩具を試せる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

広々としたキッズスペース。ボーネルンドの商品や知育玩具を試せる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

■店舗情報
「ホームズ新山下店」
神奈川県横浜市中区新山下 2-12-34
営業時間:10時~21時、資材館9時~21時、ハニーフラワー10時~19時
>HP

「TSUTAYA BOOKSTORE ホームズ 新山下店」
神奈川県横浜市中区新山下 2-12-34
営業時間:10時~21時(定休日は施設休館日に準ずる)

元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/12/160796_main.jpg

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住んでいない家のローンを払い続ける!? 離婚後の住居をどうするか問題

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住んでない家のローンを払い続ける!? 離婚後の住居をどうするか問題

離婚にはさまざまな事情があると思われますが、二人でつくった思い出だけならまだしも、子どもや財産がかかわってくると一筋縄ではいきません。「結婚するより離婚する方が大変」という人もいるくらいです。そこで、メリットパートナーズ法律事務所の木村康紀(きむら・やすのり)弁護士に、離婚の際に住居関連で問題になりがちな論点や、事前の予防策、事後の対応方法などについて伺いました。
離婚で問題になるのはやっぱり住宅ローン

「芸能人の○○夫妻が離婚!」というニュースを目にすることはよくありますが、「自分の周りでも離婚している人が増えたような…」と思ったことはありませんか? 厚生労働省の平成 29 年(2017)年「人口動態統計の年間推計」によると、1年間の離婚件数は 21 万 2000 組、離婚率(人口千対)は 1.70 と推計されるとのこと。婚姻件数は 60 万 7000 組ですから、離婚するカップルの多さがうかがえます。

「離婚の際に発生するお金問題には大きく3つあります。一つ目が『慰謝料』、二つ目が『財産分与』、三つ目が『養育費』の問題です。このうち慰謝料は離婚の理由によって金額が変わってきます。財産分与は結婚した年数などに左右されますが、揉めやすいのは住宅ローンが残っているときです」と木村先生。なんとなくそんな気はしていましたが、やはり問題になると分かりました。住宅ローンは2人でつくった負債なので、まだ残っていると不動産を売るにしても問題が生じます。

ついに印鑑を押すときが来た(画像提供/PIXTA) 

ついに印鑑を押すときが来た(画像提供/PIXTA) 

「財産分与については、ふたりでつくった財産を半分にわけるのが基本ですので、一般的には婚姻期間が長い方が額が多くなる傾向にあります。しかし、短い婚姻期間でも大きい財産がつくられている場合もあります」(木村先生)

そして財産分与の際に気になるのが、やはり不動産。住宅ローンを組んでマンションを購入したりマイホームを建てたりしたら、その扱いはどのようになるのでしょうか。

自分の親の援助は「特有財産」になる

「財産分与では不動産の価値も半分にします。ただ、『特有財産』という概念があり、『夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産』(民法第762条)については財産分与の対象となりません。」と木村先生は言います。

例えば、不動産の購入に際して、頭金などを結婚前の自分の貯金から出していたら、不動産の評価額からそれを引いた額が財産分与の対象になります。また、どちらかの親が出した部分も、その金額分は「特有財産」となります。つまり、妻の親が出していれば「妻の財産」なので財産分与の対象にはならないのです。

住み続けることにこだわると大変?

離婚に際して、子どもがいる家庭などでは、出来る限り生活環境を変えたくないということで、夫婦の一方がそれまで住んでいた不動産に住み続けることを希望することもあります。

よくあるケースとしては、夫が不動産の所有権を持っており、住宅ローンを支払っているケースです。妻がそこに住み続けることになっても、すぐには不動産の所有権を渡せないのが実情です。原則として銀行はローンを完済しない限り、名義変更に応じてくれません。そのため、ローン完済するまでは当初のままの名義で、完済後に変更の手続きをすることになります。

「解決策として、ローンを支払い終えてから妻に登記を移すことが以前からよくあります。ただ、住宅購入時はだいたい35年ローンが多いですから、払い終わるまで離婚を待つわけにもいきません。まだ若いうちに離婚する人が増えた最近はこのことが揉めやすい理由にもなります」(木村先生)

住宅ローンがまだ30年も残っている…(画像提供/PIXTA) 

住宅ローンがまだ30年も残っている…(画像提供/PIXTA) 

基本的にその不動産に住み続ける必要があるかを考え、必要ないなら売って、住宅ローンを差し引いた額を分ければよいといえます。また、価値が下がった物件で負債だけが残るケースもありますが、そうなると財産分与で取得できる額が目減りしてしまいます。

「離婚後に焦らないためには離婚前に不動産の価格をしっかりと検討し、住み続けるのが良いのか、売ってしまった方が良いのかを見極めておいた方が良いと思います」と木村先生からはアドバイスが。

不動産のほかにも分けるものがたくさんあれば問題はさほどありません。しかし、分けるものがあまりない場合、あるいは負債がある場合もあるでしょう。ローンを借りていない妻の側に離婚の理由がある場合も、慰謝料を妻が払いますが、財産は基本的に均等に分与します。

「一般論として、離婚にあたっての合意事項は公正証書をつくっておくのが望ましいです。登記が後になってしまう場合は特につくっておいたほうがよいですね。一度合意したにもかかわらず、住宅ローンを支払い終える前に、払うのをやめてしまう人もいます。そういうことがあった場合には損害賠償等を請求できるようにしておく必要があります。」(木村先生)

妻が子どもを連れて家を出て行った(画像提供/PIXTA) 

妻が子どもを連れて家を出て行った(画像提供/PIXTA) 

「妻の収入も当てにして組むペアローンは、離婚時の論点が増えるのでもめがちですが、近年はよくありがちなケースですね。そのうえ、どちらかが住み続けることにしたら、別れてもローンを共同で支払うという関係を続けなくてはならなくなってしまいます。この場合、妻が住み続けることに決めたとしても夫が売ることを決めてローンを支払うのをやめてしまったら、差し押さえの対象になって追い出されることになります」(木村先生)

妻が残りのローンを払って、所有権も持てばよいと思うかもしれませんが、銀行は、支払い能力の低さなどから妻に信用がなければ、借り換えを認めてくれません。そうなると妻は所有権を得られなくなってしまいます。

一般的には、「支払いが終わるまでは所有権を移転しない」という契約条項が住宅ローンを組む際に交わされています。親がお金を持っていて保証人として入ってくれれば、妻への所有権の移転が認められることもありますが、親も年を取りますから、他の不動産等を担保に入れなければならないかもしれません。

「本当にそこに住み続ける必要があるのかということは、よく考えるべきでしょう」と木村先生はおっしゃいました。

円満な離婚はない それでも心づもりをしておくなら

住居を買う前に離婚の対策をすることはかなり難しいようです。そもそも、離婚時にもめるリスクを避けるためだけに、ランクを落とした物件を買うのは、結婚生活としてハッピーではありません。

「それでも、物件購入に際してどちらがどれくらいの金額を払ったかをはっきりさせておくべきです。明文化しておくのは難しいですが、援助してくれた親の通帳などはお金の軌跡として証拠になりますから、残しておくとよいです。これで特有財産がはっきりします」と木村先生。「住宅ローンを組む方が所有権を持つケースが多いですから、住宅ローンを組んだ物件の、お互いの特有財産の割合をわかるようにしておくとよいでしょう」

不動産評価額は財産分与の大きなポイント(画像提供/PIXTA)

不動産評価額は財産分与の大きなポイント(画像提供/PIXTA)

評価額はきっちりと算出しよう

不動産をもらう側は不動産の価値が低い方が、財産分与の対象の中の不動産の占める割合が少なくなります。そのため、他の財産からもらえる分が多くなり、有利になります。その一方で、あげる側は不動産の価値が高いほうが有利です。ですから、自分に有利な評価額であるかどうか、きちんと準備して離婚交渉にのぞまねばなりません。評価額は裁判にでもなれば、不動産鑑定士がきちんとした額を出しますが、そこまでいかない場合、つまり調停などではお互いがそれぞれ自分たちで仲介業者や買取業者などに依頼し、評価額を出しあうことになります。

幸せに結婚生活を続けたいと思ってもそうはいかないことも多い世の中、「しっかりと公正証書をつくっておく」「早めに自分の希望を弁護士に相談」などを心の片隅に置いておくとよいかもしれません。子どもが大きくなってからだと子どもへの影響も大きくなります。「円満」はありえないとしても、無事に住まいを確保して生活できるよう、勉強しておいて損はないのではないでしょうか。

●取材協力
・メリットパートナーズ法律事務所元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2018/12/160708_main.jpg

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